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早大調査隊が発見 「3200年前のビール」エジプト観光資源に

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早大調査隊が発見 「3200年前のビール」エジプト観光資源に

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 「王家の谷」など古代エジプトの遺跡で知られるエジプト南部ルクソールで、日本の早稲田大学の調査隊が偶然発見した約3200年前のビール醸造者の墓が、世界の考古学ファンの注目を集めている。墓内部の壁画には、当時の宗教儀式や日常生活が色鮮やかに描かれており、保存状態も良好だ。このため、エジプト考古省では、過去、多くの貴重な発見があったルクソールの遺跡における最も重要な発見のひとつと評価、修復や復元作業を進め、新たな観光資源にしようと意気込んでいる。

 壁画の状態「良好」

 「古代のエジプトでは、アルコール飲料は非常に重要なものだった。日常的に消費するものというだけでなく、神へのささげものとしての意義も持っていたが、とりわけビールは非常に重要だった」

 エジプト研究家で知られる香港中文大学のプー・ムン・チョウ教授は今回の発見の意義についてこう説明する。

 フランス通信(AFP)や米CNNテレビ(いずれも電子版)などによると、今回、見つかったのは、新王国時代(紀元前1565~1070年ごろ)のビール醸造者、コンソ・イムヘブの墓。

 近藤二郎教授率いる早稲田大の調査隊が、「王家の谷」など多くの遺跡で知られるナイル川西岸で、新王国時代の第18王朝のファラオ(王)、アメンヘテプ3世時代の高官の墓の前庭を清掃していた際、T字形のイムヘブの墓の入り口を偶然、発見したという。

 イムヘブは地母神ムトの神殿で催す儀式で供えるビールの醸造責任者であるとともに、穀倉の管理者だったとされている。当時、ビールは、女性や子供と同様、神へのささげものとして珍重されただけでなく、「価格がワインの5分の1~10分の1と安いこともあり、労働者階級を中心に幅広い層に飲まれた」(チョウ教授)という。

 また、墓の内部の壁や天井には、イムヘブが妻子と過ごす日常生活や、妻子とともに神々にささげものを供える様子などが描かれていた。これらの壁画は細密なうえ色彩も鮮やかで、保存状態も良好だという。

 公開へ修復本格化

 今回の発見を受け、エジプトのムハンマド・イブラヒム考古相は「イムヘブは死者の神々のためのビール製造者のチーフだった」と断定。さらに「墓の内部に描かれた壁画はすばらしいデザインと色彩を保っており、(われわれの祖先の)日常生活や宗教的儀式を反映する内容になっている」と驚いた。

 エジプト考古省では、発掘調査が終わるまで、盗掘や壁画の破損などを防ぐため、墓地周辺を厳重に警備すると同時に、将来の一般公開に向け、本格的な修復・復元作業に入っている。

 ナイル川の両岸に広がるルクソールは、現在も約50万人が暮らす大都市で、複雑な構造の寺院や野外博物館、ファラオたちの墓のほか、推理作家のアガサ・クリスティ(1890~1976年)が名作「ナイルに死す」(1937年)を執筆したといわれるウインター・パレスホテルなどの建物で知られる。(SANKEI EXPRESS

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