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下手な私がエルザと重なればいい 舞台「国民の映画」 秋元才加さんインタビュー
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うまくいかなかった日の稽古後は「一人、台本を手に居酒屋のカウンターで刺し身や焼き鳥をつまみながら、ページをめくる」という、元AKB48の秋元才加(さやか)さん(鴨川一也撮影) 2011年に初演され、数々の演劇賞を獲った三谷幸喜作・演出の舞台「国民の映画」が2月8日から、パルコ劇場(東京)で再演の幕を開ける。小日向文世や段田安則ら名だたるキャストが続投する中、新たに抜擢されたのが、元AKB48の秋元才加(25)だ。稽古場でのがむしゃらな日々を明るく前向きに語ったが、その合間にふと漏らした言葉がこれ。
「いやぁ、今回は本当に、とんでもないところに来てしまったなぁ」
物語の舞台は、映画がプロパガンダ(政治宣伝)に利用されていたナチス政権下の独ベルリン。プロパガンダ政策を一手に担った宣伝相ゲッベルズ(小日向)の邸宅で、ナチス高官や、ドイツを代表する名優、監督…名だたる映画人が集った一夜を描いた群像劇だ。その中でただ一人、場違いな感じでやってくるのがゲッベルズの愛人で、新進女優のエルザ。秋元の役だ。
「ただでさえ、ベテランの皆さんとは演技のテンポが違って、下手な私は異端の存在。それがエルザと重なって見えればいいかなと思います」と前向きにとらえる。
登場するのは、エルザともう1人をのぞいて、ドイツ史に名が残る実在した人物。秋元は、エルザを演じるにあたり、三谷から「観客に一番近い気持ちでいて」と言われた。ゲッベルズ邸にやってきた面々を見て、エルザが「女優のツァラ・レアンダーだ!」と驚けば、それが有名な人物だと伝わり、観客をいっそう物語の奥へ、奥へと引き込んでいけるからだ。
その役目を果たすには、テンポのよいこの会話劇の波を乗りこなさねばならない。「時々、私が流れを詰まらせていると分かり、はがゆい時もあります。なのに、これが正解という手本もなく、初演をまねてもいけない。場面ごとにエルザがどんな気持ちになり、どう振る舞うのか。まず私が決めて動かないといけないんです」。決められた立ち位置で、手本通りに踊れば正解にたどりつけたAKB時代の仕事とは、大きく違う、という。
今は寝ても覚めても、頭の中は芝居のことばかり。取材前日の夜は、ナイフを持った共演俳優に追い回される夢を見た。化粧をする時間も惜しいといい、稽古期間中は寝起きのぼさぼさ頭にジャージーとリュックサック姿で稽古場に通った。
「毎日夢にうなされますが、よかった、って思うんです。なぜか? 夢にまで見るってことは、寝てる間もちゃんと考えている、ということだから。一生懸命生きてるなあ、って感じます」
新進女優らしい熱意が、すがすがしく伝わってきた。(文:津川綾子/撮影:鴨川一也/SANKEI EXPRESS (動画))
2月8日~3月9日 パルコ劇場(東京)。劇場(電)03・3477・5858。3月13~16日 森ノ宮ピロティホール(大阪)。キョードーインフォメーション (電)06・7732・8888。※愛知、福岡でも公演