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できるようになっていくのは喜び 舞台「マクベス」 常盤貴子さんインタビュー

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できるようになっていくのは喜び 舞台「マクベス」 常盤貴子さんインタビュー

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 ≪初シェークスピア 女優魂揺さぶる≫

 シェークスピアの戯曲「マクベス」は、夫の出世のため正気を失っていく、ある夫婦の物語だ。400年間、古今東西の演劇人が繰り返し、血を通わせてきたこの夫婦像を、今度は長塚圭史(38)が演出し、常盤貴子(41)、堤真一(49)らが板に立って、Bunkamuraシアターコクーン(東京)で12月8日から上演する。

 マクベスはシェークスピアの四大悲劇の一つで、11世紀のスコットランドが舞台。ダンカン王の諸侯、マクベス(堤)は、武功を立てた戦の帰途、荒野で3人の魔女に出会う。

 「いいはひどい、ひどいはいい、キレイはキタナイ、キタナイはキレイ…」。善や悪、妄想と現実を曖昧にするような呪文を唱える魔女たちが、マクベスにささやく。「やがて王になるお方」。予言はやがて、マクベスとマクベス夫人(常盤)の魂をとらえ、虜(とりこ)にし、破滅へと向かわせる。

 誰にも起こりうる話

 これまでマクベス夫人は、夫を権力へとたきつける毒婦の図像のように描かれることがあった。だが、常盤のマクベス夫人は「マクベスと一心同体の夫婦として描かれています。魔女の予言さえなければ、2人ともこんなことにはならなかった。そんな作りにしようとしています」と長塚版のプランを語る。

 「意外に思われるかもしれませんが、実は誰の身にも起こりうる、身近な体験にも通じる話です。例えば朝の占い番組があるじゃないですか。占いを信じて、今日は白い服しか着ない、と思うこともあるし。そんな小さなことが、大きく膨らんでいってしまったのがマクベス夫妻だと思います」。シェークスピア劇がいつまでも古びない理由の一端が、常盤の言葉から伝わってくる。

 スーパー不器用

 とはいえ、20年の女優業で本格的な舞台はわずかに5度目。「初シェークスピアです」という。「踏み込まずに済むのなら、踏み込みたくない世界。でも舞台を踏むたび、未来が開けてくるという感覚になる。輝いているけれど、怖い。舞台はそんな場所」と挑戦者の立場を語る。

 けれど今回は「スタッフも含め、このメンバーとなら、私にはとても縁遠かったシェークスピアの世界にも飛び込めると思った」。

 「もう、わからへん」。稽古中、常盤がつぶやくのを聞いた。すると、まるでマウンド上で窮地に立った投手の周りに捕手やコーチが駆け寄るように、堤と長塚が常盤の所に集まった。そして2人の助言を聞いた常盤が、しばし考え込むような表情を浮かべた。

 「私、スーパー不器用なんです。自分の中で、そのイメージがぱっと浮かべばいいんですけれど、浮かばないとやっぱり大変で。今回は傍白のシーンがありますが、慣れていないから、そこが特に…」。テレビや映画なら瞳孔の微妙な動きにクローズアップすれば伝わる感情表現も、舞台となれば勝手が違う。初歩的な表現の違いに戸惑っているという。「それでも、やっぱりできないことができるようになっていくのは喜び。堤さんは傍白がとても上手じゃないですか。それを間近で見ながら、いつかできるようになるための機会が、今、与えられているのだと感じています」

 演出家としての長塚とは、舞台上では初めての対峙(たいじ)となる。「怖いです。苦手なところをすごく突いてくるから。言葉、言葉、って言われ続けています。特にシェークスピア劇は、言葉そのものが美しく、一つの単語から、観客の方々はイマジネーションを広げて楽しまれている。だからまず、俳優である私たちがきちんと、クリアに伝えなければいけないと課されています」

 創る楽しさの中にいる

 クリアすべき課題は多い。が、やはり舞台は常盤の女優魂を大きく揺さぶる場なのだという。今年4月、寺山修司の没後30年記念の舞台「レミング~世界の涯まで連れてって~」(松本雄吉演出)への出演はそんな経験の一つとなった。「演劇を通して、アートの一部になるような感覚でした。そんなことは初めてで、演技に対する見方が変わり、すごく面白かった」

 マクベスもそうだ、という。「長塚圭史という、何を考えているか分からない演出家の脳内を具現化するというか。私には全体像は分からない。けれど今、それを創る楽しさの中にいる」

 人生観を聞いたところ「時の流れに身を任せですね」と返ってきた。世の流れをねじ曲げようとして、予言に人生を絡め取られたマクベス夫妻とは対照的。でも、ただ流れに身を任せっぱなしにはしない。

 「例えば、堤さんからもらったアドバイスを聞くか、聞かないかは自分次第。それぞれの視点があるわけで。でもいったん自分が、素晴らしい、乗った、と思ったことは、やろうとするし、それを可能にするためには、何でも練習し、調べたりします」。流れの中、意志という、自らの方位磁針は決して手放さない、この強さ。女性憧れの図像たるゆえんをみた気がした。(文:津川綾子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS

 ■ときわ・たかこ 1972年4月30日、神奈川県生まれ。93年に女優デビューし、豊川悦司と共演した95年のTBS系ドラマ「愛していると言ってくれ」でブレーク。その後、2000年「ビューティフルライフ」、01年「カバチタレ!」などに主演する。映画では、04年「赤い月」で第28回日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した。

 【ガイド】

 12月8~29日 Bunkamuraシアターコクーン。Bunkamura(電)03・3477・3244

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