SankeiBiz for mobile

【軍事情勢】中国の陋規瓦解を期待 「盗人の最低限のモラル」も低下

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

【軍事情勢】中国の陋規瓦解を期待 「盗人の最低限のモラル」も低下

更新

 池波正太郎(1923~90年)の小説《鬼平犯科帳》に《盗みの三か条》なる、本格の盗人が厳守する掟が登場する。

 曰く-

 《殺さず/犯さず/貧しきから盗らず》

 主人公の火付盗賊改方長官・長谷川平蔵はしばしば、三か条を一途に守る盗人を目こぼしし、平然と破る外道には容赦がない。三か条は、中国で言う《陋規(ろうき)》に近い、と感じる。

 陋規の《陋》は卑しい、《規》は規律・道徳を指す。いうなれば庶民や“裏社会の道徳”。博打にルールが、泥棒仲間にも約束事がある、といった類い。対する、支配階級が発する表向きの規則や規制、正義といった道徳観を《清規》と称す。

 「生活の方便」の崩壊

 思想家・安岡正篤(1898~1983年)の講義録や著作にも力を借りて小欄を進める。支那事変(1937~45年)当時、日支の学者が集まった際、向こうの老学者がこんな主旨の話をした。

 「日本軍の侵入で一番困るのは陋規を崩されること」

 話は、異常な膨張を止めない経済・軍事を背景とする、共産中国の危険な領域拡大の野望を葬る「何か」が潜んでいるのでは、と小欄に予感させた。

 全体、中国の庶民は収入が少なく、大家族で生活が非常に苦しい。従って、誰かが偉くなると、親兄弟はじめ親戚まで皆彼にぶら下がる。少し偉くなっても決まった俸給ではとても大家族を養えない。賄賂を受けるようになる。ところが、受けてよい賄賂、受け取り方、使い道など風俗・文化や“道徳”が歴史の中で確立している。陋規は「生活の方便」であった。

 なぜ陋規破壊は困るのか?

 中国の支配階級=国はいわば建築物で、庶民は土台。日本人が見れば悪徳と呼ぶべき陋規は土台の中に染み込み、覆す行為は“社会秩序”を壊す。一方、支配階級=国は易姓革命で取り換えが効き、清規がいかほど堕落しても大した事態ではない。ただし、取り換えは土台=“社会秩序”が保障されないと適わない。小欄はそう解釈する。

 今“社会秩序”は崩れ始めた。例えば、軍や企業に入るにあたり、余裕のある中産階級による贈賄は跋扈している。陋規に沿った「持ちつ持たれつ」。反面、3億人の中国人が毎日2ドル未満の生活をおくる。下層階級は陋規で黙認される賄賂すら捻出できない。就職できない→低所得との負のスパイラルが続く。極端な格差社会では、強盗殺人など凶悪犯罪が増加する。前述した三か条=盗人の最低限のモラルも低下していく。

 習氏一族も巨額収賄

 一例が、金融・不動産・鉱業財閥総帥へとのし上がった劉漢被告(48)。2月に殺人罪などで起訴された。地方の党・政府幹部への贈賄で公共事業を奪い、総資産は6700億円近い。商売を邪魔する地方政府幹部を更迭できる“人事権”まで有した。だが、黒社会のボスにしてもやり過ぎた。大地震の被災地復興で2300億円以上を寄付する慈善家の顔の裏で、警察幹部や検察官を含む手下を使い商売敵ら9人を殺害していた。

 庶民や黒社会の“モラルや社会秩序”、すなわち陋規の瓦解である。

 そもそも、古来より贈収賄は中国の紛う事なき風俗・文化。最後の統一王朝・清(1644~1912年)まで存在した《胥吏(しょり)》は土着の志願制小役人で、無給だったため「必要経費/給料」は庶民から“付加税”として搾取した。陋規で担保された事実上の賄賂。赴任してくる中央の官僚=政治家へも、胥吏は酒色の供応をしなければならず“税”を厳しく取り立てた。典型的なピンハネ構造といえる。

 権利を株化し、権利金を徴収して他人に貸与する胥吏もいた。どこかで聞いた話。そう、中国共産党政権下で横行、裁判が続発中の、政府・軍の地位をカネで買う《売官買官》に似る。現相場は地位によりウン百万~千ウン百万円と高額だ。

 しかし売官買官を高額と形容するのなら、党・国家指導層の収賄→不正蓄財はいかに表現すべきなのか…。

 香港の人権団体が5日、習近平国家主席(60)一族による334億円の収賄を、開催中の全国人民代表大会に調べるよう訴えたが、驚きはしない。国際的調査報道機関ICIJの1月のスクープで、抗体ができていた。租税回避地に所在する2社のデータを分析した結果-

 習氏や胡錦濤前国家主席(71)▽温家宝前首相(71)▽李鵬元首相(85)ら16人の隠し資産は、2社のデータ上だけで計4兆6200万円にのぼる。香港の月刊紙・争鳴の2012年の報道だと、国家主席や副主席、首相の月給は40万~50万円程度で、腐臭はプンプン。

 その習氏は腐敗撲滅を強化し、摘発を続ける。既に、最高指導層の一角・周永康氏(71)は汚職で取り調べ中だ。

 止まらない隠し資産流出

 ところで安岡は、表の顔である支配階級にも暗黙の掟=陋規がある旨示唆する。とすると、周氏の取り調べは、収賄を満喫する指導者が、同じく賄を懐にする指導者を摘発する構図。陋規の否定ではないか。件の老学者や小欄の考えに則れば、共産中国は消えてなくなる。

 権力闘争激化という実体も滅亡を加速する。劉被告は周氏ら中央の党幹部の庇護も受け20年以上も訴追を免れたが、周氏を追い詰めるにはまず劉被告をという段取り。当然、歴史に学べば、習氏も失脚に震えるときを遠からず迎える。権力者相互の疑心暗鬼も常で、国外にヒトとカネを流出させる。

 実際ICIJの分析では、中国や香港の2万1000人以上が海外企業のオーナーや株主になり00年以降、隠し資産104兆~417兆円が流れ出た。中国人民銀行の報告書でも、1990年代半ば~2008年までの国外逃亡・行方不明者は1万6000~1万8000人で、10兆円が持ち出された。軍事関係費の莫大な横流しも分析されており、わが国にとっては慶事この上ない。

 もっとも、慶んでばかりもいられない。庶民の目を外にそらすべく、反日目的の世論戦を強めてくる。もう一つ。

 ヒト・カネの移動で、中華街が世界各地で激増する。料理を楽しむ「美味しい街」になるのか、世話になった受け入れ国で経済をのっとり、中華方式を傍若無人に押しつける「中華帝国の禁城」になるのか…。

 「反日謀略拠点の街」には化けぬよう、切に願う次第。(政治部専門委員 野口裕之)

ランキング