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自分の壁を破るときの支えになれば 「妄想娘、東大をめざす」著者 大石蘭さん
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大好きな「エミリーテンプルキュート」を身にまとった大石蘭さん。「エミリー~」はガーリーなデザインが人気のファッションブランド=2014年3月11日、東京都渋谷区(塩塚夢撮影)
ロリータファッション大好きの女子高校生が、偏差値48から東京大学に現役合格-。そんな女の子の奮闘をつづった『妄想娘、東大をめざす』が刊行された。東大大学院で学びながらファッション誌などにイラストやコラムなどを執筆する大石蘭さん(23)の自伝的コミックエッセーだ。
東京に出て、「かわいい」世界で活躍することが漠然とした夢。成績は中の上、帰宅部、彼氏なし。福岡の女子高生が一念発起、東大受験を決意する。予備校教師たちからの厳しい課題も、大好きなブランド「エミリーテンプルキュート」のお洋服を着てパワーをもらい、乗り越える。全ては“なりたい自分”になるために-。
タイトルにもある通り、キーワードは“妄想”。「空想でも瞑想でもなくて、『妄想』。未来に向いていて、なおかつ欲望に満ちている。私のエネルギーは妄想。妄想できないときは、『あ、今元気ないんだな』って思っちゃう(笑)。妄想って、希望がないとできませんから」
ほとんどの人が経験したであろう「受験」。愛らしいイラストとコミカルかつ叙情性に満ちたセリフ回しが、ティーンエージャーの頃に抱いていた不安や焦燥、そして将来へのワクワクを思い出させてくれる。「受験のテクニック本ではなく、人とどういうふうに関わってきたかとか、モチベーションをどうやって保ってきたかとか。自分語りでも自己啓発本でもなく、誰にでも届けることができる『物語』として書きました。1年弱ぐらいかかって、東大受験より大変だった(笑)」
人気ファッション誌『spoon.』をはじめとした媒体に、イラストやエッセー、コラムなどを執筆する。「憧れの雑誌に執筆できた。あの頃抱いていた妄想の一部にいるのかな、と思う」
きっかけはある出会いだった。「よく通っていたカフェに、spoon.の編集長も来ていたんです。そこで、今まで書きためていたイラストや文章を見てもらった」。進学校とはいえない学校に通いながらも東大受験を決めたことにも共通するが、気後れせずに飛び込む思い切りのよさが、シンデレラストーリーを実現させた。「自信があるわけではない。でもだからこそ、失うものもない。ここでいかないと何にもならない!と飛び込んでしまいます」
テーマこそ受験だが、何かの目標に向けて突き進むことの大切さを教えてくれる本作。「東大受験というのは、あくまで一つの例。雨の日でも、素敵な音楽を聴けば雨が好きになる。受験というどんよりした時期でも、気持ち次第で変わる。テストだったり、昇任だったりと、誰しも戦いの時期がある。この本が、そんな自分の壁を破るときの支えに少しでもなればうれしいです」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
「妄想娘、東大をめざす」(大石蘭著/幻冬舎、1155円)