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「南シナ海 緊張高める行為自制を」 ASEAN首脳会議 ネピドー宣言

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「南シナ海 緊張高める行為自制を」 ASEAN首脳会議 ネピドー宣言

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 東南アジア諸国連合(ASEAN)は5月11日、ミャンマーの首都ネピドーで首脳会議を開き、中国公船とベトナム船の衝突で緊張が高まる南シナ海情勢を主要議題に協議し、関係国に自制と武力の不使用を求める「ネピドー宣言」を採択した。

 首脳会議に先立って10日に行われた外相会議では、南シナ海情勢に「深刻な懸念を表明する」との緊急声明を採択し、中国に自制を促した。

 これを受けた首脳レベルの宣言は南シナ海問題について、「すべての関係国が武力行使を自制するよう強く求める」と指摘した。

 また、南シナ海の紛争解決に向けた、法的拘束力のある「行動規範」の策定で早期に結論を出すことを要請。行動規範の協議入りで合意しながら消極的な姿勢を示し続ける中国を、名指しを避けつつも非難する内容となった。

 首脳会議の席上、ベトナムは、艦船などを投入して圧力を増す中国の姿勢を問題視し、ASEANとしての抗議を明文化するよう求めた。しかし、加盟国の中には、議長国のミャンマーを含め、中国と緊密な関係を持つ国も多く、調整は難航。外相会議での緊急声明と同じく、首脳会議でも中国を直接批判しないことで一定の配慮を加えた格好だ。

 ネピドー宣言では、2015年の「ASEAN経済共同体」の発足に向けて投資や貿易の自由化を進めることを訴え、地域の平和や安定にASEANが中心的な役割を果たすと強調。加盟国の連携強化を確認した。

 ASEAN議長国ミャンマーのテイン・セイン大統領(69)は会議閉幕後、記者会見し、ASEANが南シナ海などの懸案で結束して対応していくことを確認した。(ネピドー 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

 ≪国際社会に一致団結アピール≫

 ASEANの首脳会議は5月11日、南シナ海問題の平和的解決などをうたった「ネピドー宣言」を採択し、南シナ海などで覇権的行動を活発化させる中国を牽制(けんせい)する姿勢を確認した。宣言では中国を名指しすることは避けるなど、ASEAN加盟国の間では対中国で依然として温度差があるものの、ASEANが国際社会に向け、南シナ海問題の解決に向けて結束してアピールしていく動きも出始めた。

 「中国」名指し避ける

 「危険な行動が、地域の安定と海上安全保障を脅かしている」-。南シナ海問題で反中国感情が高まるベトナムのグエン・タン・ズン首相(64)は、首脳会議の中でこう述べ、ASEANとして一致団結した対応を中国にとるよう求めた。

 ただ、インドネシアのマルティ・ナタレガワ外相(51)は、10日に開かれた外相会議が「ほとんどは南シナ海問題に費やされた」と振り返り、加盟国間で立場の異なる中国への対応ですり合わせが難航したことを示唆した。

 ASEANは、中国と2002年に合意した「行動宣言」に基づき、南シナ海の領有権問題を平和的に解決しようと模索してきた。だが、中国は「対話」に応じるとしながら着々と南シナ海の実効支配を進め、石油の掘削にも着手した。

 「巨額の軍事費で圧倒的な海洋軍事大国を目指す中国は、時間稼ぎしか考えていない」(外交筋)との見方が、ASEAN内にも強まっている。

 11月のG20で解決訴え

 こうした中、ASEANは、オーストラリアで11月に開かれるG20首脳会合の場に、ASEAN議長国ミャンマーのテイン・セイン大統領を送り込み、南シナ海問題の解決を訴える方向で調整に入った。

 世界経済を議論するG20で、成長が続く東南アジア地域の安定の重要性を強調し、国際法に基づく領有権問題の平和的解決への支持を訴え、中国に圧力を加えようという考えだ。小国同士の団結によって、大国への発言力を確保しようとするASEANの「会議外交」の真価が問われようとしている。(ネピドー 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

 中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は5月10日、ASEANが外相会議で中国を牽制する声明を採択したことに対し、ベトナムとフィリピンを念頭に、「中国はASEANとの友好協力を破壊しようとする一部の国の目論(もくろ)みに一貫して反対している」との談話を発表した。(中国総局/SANKEI EXPRESS

 【ネピドー宣言の骨子】

・「南シナ海の行動宣言」の完全かつ効果的な履行に向けた協力を強化

・すべての関係国に自制と武力の不使用、緊張を一段と高めるような行動を控えることを要請

・南シナ海の「行動規範」の早期策定に向けた努力

・2015年のASEAN経済共同体実現に向けた努力を増強

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