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「自由貿易試験区」開設ラッシュの年に
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上海市で2013年9月29日に「自由貿易試験区(FTZ)」が初めて開設されて3カ月あまり。山東省青島(チンタオ)市や福建省アモイ市など中国沿岸の各地方政府が、試験区の開設申請や申請の準備に相次ぎ名乗りを上げている。
1979年に広東(カントン)省深●(=土へんに川、しんせん)市などで初の「経済特区」が認可され、製造業誘致で成長を遂げたが、輸出の伸び悩みや人件費高騰で地方の産業政策は曲がり角に来ている。試験区は金融やサービス業の規制緩和がカギ。地方政府は外資誘致や成長持続への次なる起爆剤にしようと、認可を狙う。14年は開設ラッシュの年になりそうだ。
上海に続く第2グループで最有力とされるのが広東省。省内の前海(深●(=土へんに川)市)、横琴(珠海市)、南沙(広州市)に、関税地域としてはそれぞれ異なる香港とマカオを加えた3地区の共同体で、試験区を国務院(中央政府)に申請する計画だ。
広東省は14年に香港、マカオとのサービス貿易自由化を推進する方針も掲げている。すでに香港企業や外国企業の香港法人に対し、一部地域での金利自由化や、医療などサービス業の分野での参入規制を緩和する試験的な制度もスタートさせた。試験区認可を受ければ、一段と踏み込んだ規制緩和を目指す。
南部では、東南アジア諸国連合(ASEAN)との結びつきが深く、ベトナムとも陸続きの広西チワン族自治区が試験区を準備。また台湾の対岸で、中台貿易の中継地点でもある福建省アモイ市と、福建省福州市平潭(へいたん)島の対台湾ビジネス先行実施拠点の「平潭総合実験区」が試験区開設申請を行ったという。
中部では、湖北省武漢市が申請準備を進めている。武漢市は13年に中国内陸部では最大級の保税区設立を申請ずみ。この保税区を試験区に格上げする案が浮上している。上海の試験区も保税区が起点となった。このほかに、大型コンテナなどが接岸可能な深水港を抱える浙江省舟山市も申請する見通しだ。
北部では、山東省青島市の港湾地区で申請を行っている。青島市も保税港区を主体に、貿易金融や外国為替を改革の重点とする。貿易面で密接な関係にある日本や韓国を意識した試験区を狙う。さらに、上海市に次いで日系企業が多数進出している遼寧省大連市も試験区の開設に意欲を示しているという。
上海で始まった試験区に関しては、「金融自由化などはかけ声ばかりで従来の保税区とあまり変わらない水準」(大手商社幹部)などと辛口の評価が少なくない。中国版の「護送船団方式」に守られた中国工商銀行など既得権益層が金融自由化では抵抗勢力となり、「習近平指導部の内部で利権をめぐるせめぎ合いが続いている」(日中関係筋)との見方が支配的だ。
ただ、35年前に始まった経済特区も、深●(=土へんに川)市など認可を得た限られたエリアだけが先行的に製造業で現在につながる発展を遂げた。中国では、いかに人より先にバスに乗るかが成否を分けるという経験則がある。
●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい、1904~97年)は経済特区を舞台に中国を「世界の工場」に押し上げた。習近平指導部も試験区をテコに“脱製造業”で成長軌道に乗せる基本路線では一致しているが、総論賛成、各論反対の既得権益層のカベを乗り越えられずにいる。絶対的な政治権力を握っていた●(=登におおざと)小平時代との差が試験区問題に見て取れる。
内政とからみあいながら、上海に続く試験区がどの都市に認可され、どのような規制緩和が進むか。中国経済が次の成長段階を迎えられるかどうかを占う重要な示唆となりそうだ。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)