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科学
無事こそ名船長 若田さん任務完了
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後任のスティーブン・スワンソン飛行士(左)と握手し、国際宇宙ステーション(ISS)の船長任務を引き継ぐ若田光一さん(右)=2014年5月13日未明(日本時間、NASAテレビから) 国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務めた若田光一さん(50)が日本時間5月13日未明、ISSを指揮する権限を後任の米国人飛行士に引き継ぎ、66日間の船長の任務を終えた。
若田さんは、米国とロシアの5人の飛行士を率いてISSを安定的に運用し、アジア初でもある船長の大役を無事に果たした。14日にソユーズ宇宙船でISSを離れ、地球に帰還する予定。
ISSの日本実験棟きぼうで乗員6人全員が集まって引き継ぎ式が開かれ、若田さんは「船長を務めることができて光栄だった。私にとって信じられない経験だったが、仲間の助けとチームワークなしには全うすることはできなかった」とあいさつ。後任の米航空宇宙局(NASA)のスティーブン・スワンソン飛行士と固く握手して任務を引き継いだ。
若田さんは、仲間の飛行士の名前を1人ずつ呼んで感謝を伝え、筑波宇宙センター(茨城県つくば市)の管制チームの仕事ぶりも称賛。スワンソン飛行士は「コウイチのリーダーシップは素晴らしかった」と応えた。
若田さんが船長として過ごした約2カ月間は大きなトラブルはなかったが、思わぬ緊急事態に直面した場面もあった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると3月下旬、夜中にロシア側の設備から、火災警報が鳴り響いた。
密閉された空間であるISSでは、火災が発生すると危険な事態につながりかねない。若田さんは他の飛行士と連携し、煙が出ていないかなど異常がないことを確認した。地上とも連絡を取り結局、警報装置の誤作動と判明した。若田さんは昨年(2013年)11月からISSに滞在、ことし3月9日に第39代船長に就任した。それまでの船長はほとんど米国とロシアから選ばれ、両国以外は欧州とカナダから1人ずつだった。
「何事もなく進んだというのは大きなこと」。2012年にISSに4カ月滞在した星出彰彦さん(45)は、安全運用という最大の任務を果たした若田さんをたたえた。
船長といえば危機に迅速に対応するイメージが浮かぶが、日常的な仕事は業務の調整だ。地上の管制局とやりとりし、米国やロシアからの乗員をまとめるには円滑なコミュニケーションが重要となる。
若田さんは「和の心」を掲げ、乗員全員で顔を合わせて夕食をとれるように努力した。星出さんは「昼間は忙しいので、顔を合わせないこともある。意識のずれを未然に防ぐための一つの手段だ」と強調する。
安全面への気配りも欠かせない。星出さんは「若田さんは毎晩見回りをし、寝る前に火の用心のチェックをしていた」と明かす。順調に見えた運用には、若田さんと乗員の努力があったという。
若田さんの活躍は「将来の有人宇宙探査につながった」と考える星出さん。「(日本への)責任や期待も高くなる。第2、第3の船長を出すように頑張らないと」と意気込んでいる。(共同/SANKEI EXPRESS)