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映画初主演の堂珍嘉邦 「ライブと一緒で瞬発力がいる」
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さりげないポーズもキまる堂珍嘉邦(どうちん・よしくに)さん。俳優としても存在感があった=2014年3月3日、東京都新宿区(伴龍二撮影) 人気ボーカルユニット「CHEMISTRY(ケミストリー)」のメンバーで、現在はソロ活動を展開中の堂珍嘉邦(35)が、サスペンスタッチの人間ドラマ「醒めながら見る夢」で映画初主演に挑んだ。監督兼脚本を務めた辻仁成(54)を「ミュージシャン、芝居、小説とさまざまな表現手段を持つすごいアーティスト」と評し、「確実に僕の世界をまた一つ広げてくれた」と謝意を示した。
京都。劇団の人気演出家、優児(堂珍)は、恋人で看板女優だった亜紀(高梨臨)と密かに結婚し、ひっそりと一緒に暮らし始めた。そんな優児の前に亜紀の妹、陽菜(石橋杏奈)が現れ、「姉のことで話がしたい」という。実は優児は以前、亜紀に内緒で陽菜と関係を持った過去があった。優児は陽菜に会おうとせず、冷たい態度をとり続けた。次第に周囲との交際も断つようになり、日に日に表情を失っていく。優児を見かねた劇団を主宰する竜也(松岡充)が自宅を訪ねると…。
2009年「真夏のオリオン」で映画デビューを果たした堂珍は、撮影時に感じていた映画独特のリズムがだいぶ身についてきたと感じている。「映画はライブと一緒で瞬発力がいると思うんですよ。それは一瞬でその場の空気を変えてしまう力のことです。映画と音楽はそこが似ている。空気を変えてしまうためには、入念に準備をしたうえで本番に臨まねばならないし、相当な集中力も必要です」。
本作は堂珍が主役として初舞台を踏んだ音楽劇を映画化したもので、優児に愛着もあるし、役作り自体に大きな戸惑いはなかった。亜紀の死を認められず、どんどん自分を追い込んでいき、果ては現実と非現実の境目が分からなくなって、暴れたり、夢遊病者同然となってしまう優児の姿に、堂珍は「感情にメリハリがあって演じるうえではおもしろかったですよ」と満足そうだ。
役者になろうという気持ちはまったくなかった。ケミストリーとして活動中の11年、辻が手がける舞台に出演したことで、「外側から自分の本業である音楽を見てみたいと感じるようになった」という。音楽、脚本、作家、監督…とあらゆる立ち位置から物事を眺められる辻と言葉を交わすうちに、表現者として素敵な人だとの思いを強めていった。「辻さんの音楽は『きれいな世界観』といったイメージがあり、自分の好きな感性でもあるんです。そんな感性に包まれた世界で演じられるのだとしたら、演技をやってみる価値もあるのかな。辻さんとの出会いは偶然でしたが、人生の大事なターニングポイントとなりました」
映画初主演といっても、堂珍に気負いはなかった。「確かに主人公は看板であり、登場回数も多いけど、ある意味、お膳立てされたものですよ。例えば照明の明るさとか、1シーン、1シーンですべて入念に準備されたうえで、僕は撮影に臨めばいい」。だから、今しか撮れないかけがえのないシーンに対し、「なるべく一発で応えよう」との気持ちを込めたそうだ。
今後も仕事のベースは音楽にある。「フェスの常連になって、自分がオーガナイズするくらいになりたい気持ちが強い。海外のフェスにも顔を出してみたい」と10年後の自分を見据えた。俳優業に関しては、「辻さんと同じようないい出会いがあり、自分の内面の成長につながるのならば、前向きに考えたいです。でも、音楽そっちのけで役者やるのは本末転倒ですし、僕は音楽で走ってきたので、まずは音楽をしっかりやりたい」という。
ちなみに主題歌は堂珍がボーカルを務め、優しげな声でバラードを歌いあげた。本作の舞台が京都ということで、作詞した辻は日本のよさや優児の葛藤をふんだんに歌詞に込めたらしい。「撮影後すぐ、優児の気持ちが体に染みついているうちに録音してしまいました」。5月17日から東京・新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:伴龍二/SANKEI EXPRESS)
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