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FRB量的緩和縮小、イエレン議長、安全運転
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米連邦準備制度理事会(FRB)は6月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などを大量購入する量的緩和政策の縮小とゼロ金利政策の継続を決めた。ジャネット・イエレン議長(67)はFOMC後の記者会見で、経済拡大というプラス要因と雇用環境の不安定さというマイナス要因を合わせて強調し、景気の上ぶれと下ぶれを想定した安全運転に徹している。ただし市場では、失業率の低下が続いていることや物価上昇ペースが安定し始めていることから、イエレン氏よりも景気に強気な見方も多い。FRBが示した政策金利水準の見通しも、利上げ開始時期の前倒しを示唆するもので市場での臆測を呼びそうだ。
FRBは量的緩和政策の規模を月450億ドルから350億ドル(約3兆6000億円)に7月から縮小させることを決定。規模縮小は昨年(2013年)12月のFOMC以降5回連続だ。イエレン議長はFOMC後の記者会見で「足下の経済活動は立ち直っており、今後も緩やかな拡大を続けてく」と発言。ゼロ金利解除に向けた「出口戦略」の詳細を年内に明らかにする方針も示し、量的緩和で膨らんだFRBの保有資産額を徐々に正常化させていく準備も進めつつある。
FOMC後に示された経済見通しでは、2014年の実質国内総生産(GDP)成長率を3月時点の2.8~3.0%から、2.1~2.3%に引き下げた。しかし、これは厳冬の影響を受けた第1四半期のマイナス成長を考慮したもので、15年の見通しは3.0~3.2%、16年は2.5~3.0%と3月時点の数値が据え置かれ、経済の拡大傾向を改めて確認したかたちとなった。
ただし、イエレン氏は米国経済の先行きを楽観的にみているわけではない。米国経済には金融危機後の経済低迷の中で職探しを諦めた人や半年以上も失業状態が続いている人の割合が高いといった不安材料もあるからだ。働く人々が減れば米国経済の地力が落ちるだけに、FRBにとって雇用状況の改善は重要な課題といえる。
イエレン氏は会見で「経済がさらに強くなれば、これらの人々が労働市場に戻ってくる」として、今後もゼロ金利を継続して経済拡大を下支えすることの重要性を強調した。金融緩和の継続に軸足を置く「ハト派」の立場で知られるイエレン氏は、足下の経済拡大よりも雇用の不安定さの方が気になるというのが本音のようだ。
ただし、こうしたイエレン氏の態度には、金融緩和縮小に前向きな「タカ派」の立場からは異論もある。米国の失業率はすでに6.3%まで低下しており、歴史的な平均値である5.8%との差が縮まっている。また(6月)17日に公表された5月の消費者物価指数が食品とエネルギーを除いた年率ベースで2.0%上昇となった。直ちに景気が過熱状態になる懸念があるわけではないが、「失業率も物価もFRBの見立てを上回るペースで改善している」(市場関係者)という指摘もある。
また、イエレン氏が懸念する職探しを諦めるなどした人たちの問題についても、「さらに景気が回復したとしても、仕事に就くことはない」との指摘もある。経済環境とは無関係に高齢などを理由に職探しをやめたケースも多いためで、こうした分析が正しければ金融緩和の過度の長期化は雇用を改善させることなく、インフレ圧力を高めだけに終わる。
16人のFOMC参加者による15年末の政策金利予想の中央値は1.125%で、3月時点の1.0%からやや上昇した。FOMC開催ごとに政策金利を0.25%分ずつ引き上げることを想定すれば、利上げの開始時期は市場が想定していた15年後半ではなく、前半に前倒しされる可能性があることを示唆するものだ。
3月の初記者会見で利上げ時期を示唆したとして市場の混乱を招いたイエレン氏は、「金融緩和縮小のペースは雇用や物価の見通しにかかっている」「利上げ開始時期についての機械的な方程式はない」などと慎重な発言を繰り返しているが、今後も市場はFRBの対応に神経を尖らせることになりそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)