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国際
国交正常化の突破口模索 腹を固めた北
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北朝鮮・首都平壌市
北朝鮮政府が運営するポータルサイト「ネナラ」(朝鮮語でか「わが国」の意味)が7月5日、『特別調査委員会』と題する報道を行った。
<朝日政府間の合意に従って、共和国は2014年7月4日から「特別調査委員会」を設けてすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を開始することになる。
1.「特別調査委員会」の権能「特別調査委員会」は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会から、すべての機関を調査し、必要に応じて当該機関および関係者をいつでも調査に動員させる特別な権限を付与される。
2.「特別調査委員会」の構成体系と主要メンバー1)「特別調査委員会」の構成体系「特別調査委員会」は、国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部、人民政権機関をはじめ30人程度の当該機関の人員で構成し、中央に次のような4つの分科と各道を中心に必要な市・郡に支部を置く。
-分科構成
○日本人遺骨分科 国土環境保護省、人民政権機関、赤十字会、社会科学院、人民武力部など、当該機関の関係者
○残留日本人および日本人配偶者分科 赤十字会、人民保安部、人民政権機関など、当該機関の関係者
○拉致被害者分科 国家安全保衛部、人民保安部、最高検察所、保健省、人民政権機関の当該の関係者
○行方不明者分科 人民保安部、国家安全保衛部、赤十字会、人民政権機関の当該の関係者>
北朝鮮が、「拉致被害者分科」を設置し、国家安全保衛部(秘密警察)を担当機関の筆頭に置いていることは、「われわれとしても拉致問題に誠実に対処する」というシグナルだ。もっとも北朝鮮の「誠意」は、国際基準とかなり異なるので、事態の進捗(しんちょく)を楽観視してはならない。
「特別調査委員会」の主要メンバーについても北朝鮮は。前記「ネナラ」で公表している。
<委員長 徐大河・朝鮮民主主義人民共和国国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長
副委員長 金明哲・国家安全保衛部参事
副委員長 朴永植・人民保安部局長(中略)
拉致被害者分科責任者 姜成男・国家安全保衛部局長>
この人選からしても、今回の調査が金正恩・国防委員会第一書記に直属する人民保衛部の主導によってなされることがわかる。
「ネナラ」は、調査委員会の活動態勢についてこう記す。
<-中央の整然とした指揮体系の下で運営する。
-各分科責任者が当該の対象別による調査を責任を持って行い、その結果を「特別調査委員会」の担当副委員長に随時報告し、必要な対策を立てる。
-各分科別に調査が深まって日本側の関係者との連携、協同が必要な場合、各分科責任者が調査委員会に提起して日本側の当該関係者の協力を求める。
-調査進行状況と結果に対しては分科別にまとめて「特別調査委員会」の指揮部に提起するようにし、「特別調査委員会」はその状況を日本側に随時通報し、互いに情報を共有しながら対策を立てる>
「日本人問題の調査」という名目で、外務省だけでなく警察庁、内閣府などとの信頼関係を構築し、日朝国交正常化交渉に向けた突破口を開くというのが北朝鮮側の狙いだと思う。
今後2、3カ月で、日朝関係が飛躍的に前進するか、それとも交渉が中断し、再び冷え込んだ関係になるかが見えると思う。いずれにせよ金正恩体制が、安倍政権と本気で交渉すること腹を固めたことは間違いない。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)