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【拉致再調査】「大きな一歩」…なお残る不信感

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【拉致再調査】「大きな一歩」…なお残る不信感

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5月28日、首都ストックホルムで行われた3日目の日朝外務省局長級協議を終え、記者団に囲まれる北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使。翌29日、北朝鮮はすべての拉致被害者の再調査を約束した=2014年、スウェーデン(ロイター)  5月28日まで行われていた日朝政府間協議からわずか1日、前日には合意できなかったとされた拉致被害者の再調査実施が29日、安倍晋三首相(59)から発表された。調査対象は政府認定の拉致被害者だけでなく、それ以外の拉致の可能性が排除できない特定失踪者らも含まれる。拉致被害者や特定失踪者の家族は進展に期待を寄せる一方で、何度も不誠実な対応をしてきた北朝鮮に対する不安ものぞかせた。

 「とにかく誠意みせて」

 横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(78)は「たくさんの人が元気でいるのを望んでいる。成功することを願っている」と祈るように語った。

 市川修一さん=拉致当時(23)=の兄、健一さん(69)は「昨日まで協議継続との知らせに落胆していたが、再調査の開始を約束したと聞き、これをチャンスと前向きにとらえ、首相や拉致問題担当相を信頼したいと思っている」と喜んだ。

 日朝両政府は2008年に拉致被害者の再調査を行うことでいったん合意したが、その後北朝鮮が一方的に調査をほごにした経緯がある。松木薫さん=拉致当時(26)=の姉、斎藤文代さん(68)は「08年のときの再調査がうまくいかなかったので、今度は誠意ある調査に期待したい」と話す一方で、「(北朝鮮は)とにかく誠意をみせてくれないといけない」とくぎも刺した。

 これまで偽の証拠を出すなど不誠実な対応を繰り返してきた北朝鮮。家族の中には調査がしっかりと実施されるのかについて不安感も強い。

 松木薫さんの弟、信宏さん(41)は「調査が始まったとしても、家族の考えているスタートラインにも立っていない。死んでいるという家族が生きているという状況になって初めて救出へのスタートラインに立てる。家族の姿が見えない状況では喜ぶことはできない」と訴えた。

 特定失踪者も対象

 再調査では、政府が認定する安否不明の拉致被害者12人のほか、拉致の可能性が排除できない特定失踪者も対象に含まれる。これまで北朝鮮との交渉で取り上げられることがほとんどなかったため、家族は再調査に事態進展への望みを託している。

 1973年に千葉県で失踪し、拉致問題に取り組む「特定失踪者問題調査会」が「拉致濃厚」とする古川了子(のりこ)さん=失踪当時(18)=の姉、竹下珠路さん(70)は「今回でようやくスタートラインに立てたという気持ち。特定失踪者の家族として、今までにない一歩だ」と喜んだ。

 74年に新潟・佐渡島で行方不明となり、同じく「拉致濃厚」とされている大沢孝司さん=失踪当時(27)=の兄、昭一さん(78)は「一歩前進だと思っている。一刻も早く調査が始まり、私の弟が生存しているという情報が出てくればと願っている」と話した。

 ≪日本は毅然とした態度で≫

 ■早稲田大学国際教養学部の重村智計(としみつ)教授(68)の話 「北朝鮮が再調査に合意したことは拉致問題解決に大きな進展だ。これは、北朝鮮内の経済状況が危機的状況にあることを物語っている。食糧や石油がなく外貨が入ってこない現状をすぐにでも打開したかったのだろう。日本側が、北朝鮮が再調査を約束しなければ日本も何もしないという立場を貫いた結果だ。日本政府は北朝鮮の立場が弱いということを理解して、交渉決裂も辞さない覚悟で臨むべきだ」

 ≪ゼロ回答はない≫

 ■コリア・レポートの辺真一(ピョン・ジンイル)編集長(67)の話 「今回の協議で北朝鮮側は、拉致被害者を監督する国家安全保衛部のメンバーが同席しており、再調査への姿勢は本気だとみていい。背景には経済制裁の緩和だけでなく2つの外交的戦略がある。米国を6カ国協議に引っ張り出すことと、現在、関係が最悪な中国や韓国に対する牽制(けんせい)だ。加えて金正恩政権最初の調査でつまずくことはできないため、ゼロ回答はなく、何人かの生存者を出してくる可能性が高いと思う」(SANKEI EXPRESS

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