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【北ミサイル】北、ノドン2発 日米韓会談を牽制

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【北ミサイル】北、ノドン2発 日米韓会談を牽制

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北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)の射程=2014年3月26日午前2時35分と42分で、いずれも北朝鮮・平安南道粛川(スクチョン)から東<日本海の公海上>に向けて発射された。  北朝鮮は3月26日未明、中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)2発を発射した。ミサイルはいずれも日本海の公海上に落ちた。ノドンは日本のほぼ全域を射程に収める。発射とほぼ同時刻にオランダ・ハーグでは北朝鮮の核問題を話し合う日米韓首脳会談が行われており、会談時間に合わせて発射することで、日米韓を牽制(けんせい)する狙いだったとみられる。

 韓国軍合同参謀本部によると、ミサイルの発射は午前2時35分と42分で、いずれも平壌北方の西海岸に近い平安南道粛川(スクチョン)から東に向けて発射された。移動式発射台から打ち上げられたミサイルは高度160キロを上回る高度に達し、645~662キロ飛んで朝鮮半島を横断、半島の東約500キロの日本海に落下した。

 ノドンの発射は、2009年7月以来。ノドンの特徴である音速の7倍以上の速度が出ていたことなどで特定した。発射に際し、北朝鮮は事前に航行禁止区域の指定をしていなかった。

 北朝鮮は2月21日から、米韓合同演習や合同訓練に対抗するかたちで、短距離弾道ミサイル「スカッド」やロケット砲を断続的に発射した。今月(3月)16、22、23日には1960年代に開発され旧ソ連から導入した地対地ロケット「フロッグ」を大量に発射した。韓国国防省は26日、「国連安全保障理事会の決議に違反する」として北朝鮮のミサイル発射を非難。韓国軍は今後の追加的な発射を警戒している。

 《挑発の一方で対話姿勢は崩さず》

 北朝鮮が日米韓首脳会談の時間に合わせて、中距離弾道ミサイル「ノドン」の発射に踏み切ったのは、北朝鮮問題を話し合う日米韓を明らかに念頭に置いたものだ。北朝鮮は一方で、日本や韓国との対話姿勢を続けており、ノドンの発射が対日・対韓協議に、深刻な影響は及ぼさないと読んでいることがうかがえる。

 米軍と韓国軍は2月下旬に合同軍事演習を始め、現在、4月18日までの予定で合同の野外機動訓練「フォールイーグル」を実施している。北朝鮮はこの間、短距離弾道ミサイルや多連装ロケット砲などを断続的に発射している。

 これらは射程55~500キロと推定され、韓国を射程に収めたものだが、ノドンは日本をほぼ全域、射程下に置く。韓国に加え日本も攻撃圏内にあることを意図的に見せつけたといえる。

 ただ北朝鮮は今回、射程がより長い中距離弾道ミサイル、ムスダン(射程2500~4000キロ)や長距離弾道ミサイル、テポドン2号(射程約6000キロ)ではなく、ノドンの発射にとどめた。国際批判がより高まる恐れのある長距離ミサイル発射はあえて避けたようだ。

 北朝鮮は今年に入り韓国に対話を呼びかけ、韓国側の要求に応じ南北離散家族再会を復活させた。日本とも赤十字協議の場を持ち、今月(3月)30、31日には北京で政府間の局長級協議を行う。軍事的挑発や牽制の一方で対話姿勢は崩していない。

 米韓合同訓練に加え、日米韓首脳が北朝鮮を“懸案”として話し合う中、金正恩(キム・ジョンウン)政権にとり対話姿勢だけでは国内的にも示しがつかない。ノドン発射は日本をも意識し、短距離ミサイルやロケット砲の発射よりも強い軍事的示威だ。今後も北朝鮮は、協議をしつつ相手を激怒させない程度の牽制は続けるとみられる。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS

 《12年とは対照的対応》

 日本政府は3月26日、北朝鮮による中距離弾道ミサイル発射に対し、北京の大使館ルートで北朝鮮側に「遺憾だ」と抗議。安倍晋三首相は訪問先のオランダ・ハーグで、情報収集と分析に全力を挙げるとともに、米韓両国と緊密に連携しながら対応することなどを関係各省に指示した。ただ、北朝鮮と30、31両日に北京で行う外務省局長級協議は予定通りに実施する方針で、北朝鮮側の狙いを見極めながらの難しい判断を迫られそうだ。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は26日の記者会見で、ミサイル発射は日朝平壌宣言や国連安全保障理事会決議に違反する行為として非難した。ただ、日朝局長級協議については「拉致問題を扱うとともに、ミサイルや核という安全保障上の懸念を取り上げることができる。わが国の立場をしっかり主張する」と述べ、中止しない考えを明らかにした。

 岸田文雄外相も同日の衆院外務委員会で、局長級協議の開催方針について「しっかりと北朝鮮にメッセージを送らなければならない」と説明した。

 ただ、2012年12月に北朝鮮が長距離ミサイル発射を予告した際には、日本側が局長級協議の延期を通告しており、今回は対照的な対応となった。日本政府は今月(3月)30日からの協議を拉致問題解決に向けた「最高のチャンス」(政府高官)と捉えており、拉致問題と核・ミサイル問題など諸懸案の包括的な解決に向けた対応が注目される。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS

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