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世界の富豪を魅了するロールス・ロイス どうやって成功を勝ち取ったか

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世界の富豪を魅了するロールス・ロイス どうやって成功を勝ち取ったか

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ロンドンでの展示会に登場したロールス・ロイスの特別限定モデル「ブルーバード」。内外の報道関係者が集まった(内藤泰朗撮影)  【Brand Story】

 新車の最低販売価格は20万ポンド(約3400万円)。最高価格は“企業秘密”。顧客は世界の富豪たちだ。1台ずつ手作りで生産される英国の超高級自動車ロールス・ロイスは、数ある高級車の中でも、究極のラグジュアリーを追求する異色の存在である。どうやって成功を勝ち取ったのか-。その秘密を探ろうと、英南部グッドウッドにあるロールス・ロイスの“工場”を訪ねた。

 工場は森の美術館

 迎えは、ロールス・ロイスの4ドアセダンモデル、ゴーストだった。ロンドン中心部から2時間半。渋滞も気にならない極上の移動時間を堪能して到着したのは、英南部の田園地帯にある本社だ。緑に包まれたガラス張りの近代的な社屋はまるで森の美術館。とても工場には見えない。

 会社設立の経緯などの説明の後、早速、車の組み立て現場を見学。車体や車内の色からダッシュボードや革製シートに刻み込むマークのデザインを決めるまで、担当者が顧客の要望に合わせて世界に1台だけの車をつくり上げていく。

 職人たちが内装用の木材に何度もラッカーを塗ったり、ダッシュボードにダイヤモンドを埋め込んだりしていくのだ。

 「思い出がたくさん詰まった庭の木が嵐で倒れたので、それを内装用の木材に使ってほしい」「お気に入りのピンクの手袋に合わせたシートカラーにしてほしい」…。自家用ジェット機で飛んでくる顧客もいる。彼らの要望にこたえて完成させていくため、値が張るわけだ。工場は工房。車はそこから生まれる「作品」だった。

 中国語で書かれたロゴの見本も置いてあった。担当者によると、中国が近い将来、最大の顧客である米国を追い抜く可能性があるという。

 ハイテク空飛ぶ絨毯

 視察の後はいよいよロールス・ロイスの試乗だ。用意されていたのは、昨年発表されたばかりの最新モデル、レイス。これまでとは異なる若い富裕層をターゲットにした2ドアクーペの戦略的なモデルだという。

 販売価格が3000万円以上もする車を運転するのはさすがに緊張した。観音開きのドアを開け、運転席に身を沈めてスタートボタンを押すと、6.6リットルV12気筒エンジンが静かに始動。電子制御の8速オートマチックトランスミッションと最高出力632馬力のパワーで、大きな車体が軽々と動く。不思議なほどの安心感に包まれた。

 ヒツジが草をはむ牧草地帯のワインディングロードでアクセルを踏み込むと、からだが突然シートに押しつけられた。

 ロケットブースター付きの空飛ぶ絨毯(じゅうたん)に乗っているような加速と浮遊感である。人工衛星からの情報で先の進路に合わせて最適なギアを自動で選択する新技術が、ドライバーのストレスを最小限にするそうだ。

 このほかにも臨場感ある音楽を楽しめる音響や高速無線インターネット接続などのハイテク技術を導入。ユニークなデザインと英国の伝統的な職人技とを融合させることで、新たな顧客層を開拓しようという強い意思が、車から伝わってきた。

 「旧敵国」最強タッグ

 高級車の代名詞になったロールス・ロイスも、1960年代の技術革新の遅れや航空機用ジェットエンジン開発の失敗などが原因で71年に倒産し、国有化される苦難と屈辱を経験してきた。73年には、航空機と自動車部門が分離され、それぞれ民営化されたが、自動車部門は低迷が続いた。

 90年代になると、ドイツの自動車大手BMWと提携しながら、同じドイツのフォルクスワーゲンが経営権を握るという“ねじれ状態”が発生。2003年にようやくBMWが経営権を得て、現在の形になった。

 以降、年間の生産台数は三千数百台だが、08年の世界的な金融危機をものともせずに収益を増やし続けている。

 「ロールス・ロイスは、成功のシンボル。成功者のためにぜいたく品をつくっている。顧客には、私たちのファミリーになってもらい、特別にぜいたくなイベントに参加してもらっている。お金では買えない体験だ」

 ドイツ人最高経営責任者(CEO)のトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、SANKEI EXPRESSとのインタビューでこう答え、「今後も革新的なアイデアに投資していく」と強調した。

 英国が生んだ「ロールス・ロイス」は、かつては敵同士の英国とドイツのメーカーが、お互いの得意分野を生かしながら最強のタッグを組むことで、いま大きな花を咲かせている。(ロンドン 内藤泰朗、写真も/SANKEI EXPRESS

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