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「チップくれ」“偽エルモ”大量増殖 粗暴な振る舞い…社会問題化
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米の人気教育番組「セサミストリート」に登場するキャラクターの「エルモ」。その着ぐるみを着た偽物が観光客でにぎわうニューヨークのタイムズスクエアに大量“発生”し、社会問題となっている。
観光客と一緒に写真を撮ってチップを要求したり、粗暴な振る舞いで逮捕されるケースが目に余るようになり、市当局が取り締まりに乗り出す意向を示したからだ。ただ、米国の憲法が保障する「言論の自由」との兼ね合いもあり、その是非が欧米メディアでこの夏、ホットな議論を巻き起こしている。
「このようなトラブルは行き過ぎであり、取り締まられる必要がある」
ロイター通信や米紙ウォールストリート・ジャーナル(いずれも電子版)などによると、ニューヨークのビル・デブラシオ市長(53)は7月28日、こんな声明を出した。
この数日前には米映画「スパイダーマン」の衣装を着たストリートパフォーマーの男が、警官を殴って逮捕された。
男は1ドルを渡そうとした女性と口論、止めに入った警官にパンチを食らわした。英紙ガーディアン(電子版)によると、男は女性に「チップは5ドルか、10ドルか、20ドル、いずれかの紙幣でしか受け取らない」と話していたという。
市長声明を受けてキャラクターの版権元も動いた。「エルモ」や「クッキーモンスター」の著作権を有する非営利団体の「セサミ・ワークショップ」は29日、「セサミは確かに非営利だが、世界中の誰に対してもキャラクターの着ぐるみを着て公道でパフォーマンスをすることを認めたことはない」と表明。
他のキャラクターの版権を持つ企業とも話し合いを始めており、パフォーマーたちがタイムズスクエアでキャラクターの着ぐるみを着て観光客と写真を撮ることをやめさせるための計画を練っていることを明らかにした。
一部の市議らはすでに、キャラクターの着ぐるみ着用を「許可」制とし、その際に着用者の「経歴審査」を義務づける法案を作成中だ。“偽キャラ”につきまとわれるのを嫌ってブロードウェーの劇場に足を運ぶミュージカルファンが減り、興行収益に影響が出ていることも背景にはある。
一方で、「表現の自由」の側面から、こうした規制に慎重な見方も出ている。英紙ガーディアンは、法律の専門家の話として、着ぐるみの着用にライセンスを必要とすることや、着用者の経歴審査を行うことは、欧米で広く認められている「言論の自由」に違反する可能性が大きいと指摘している。
アニメなどのキャラクターに扮装(ふんそう)して公道をぶらつく行為自体は、合衆国憲法修正第1条が保障する「言論の自由」により認められる。“偽キャラ”たちは寄付やチップという形で「対価」を要求。こうした行為は労働ではなく、大道芸や物乞いに該当するため、やはり合法だ。
「政治家が誰かの衣装を制限しようなんてナンセンスだ。それは、アルマーニのスーツを着る人に法律で『許可』を取ることを義務づけるのと同じことだ」
英紙ガーディアンは米ジョージ・ワシントン大学の法学教授、ジョナサン・ターレイ氏の言葉を引用し、「規制」の難しさを指摘する。
結局はストリートパフォーマーのモラルに頼るしかない現状を、ロイター通信(電子版)は、こんな記事の見出しで表現した。