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18歳から46歳まで年代ごとに演じ分けた 映画「イヴ・サンローラン」 ピエール・ニネさんインタビュー

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18歳から46歳まで年代ごとに演じ分けた 映画「イヴ・サンローラン」 ピエール・ニネさんインタビュー

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「自己破滅していく側面が一番難しかった」と語る、俳優のピエール・ニネさん=2014年8月7日、東京都千代田区(寺河内美奈撮影)  次々と革命的なコレクションを発表し、「モードの帝王」とたたえられたフランスのファッションデザイナー、イヴ・サンローラン(1936~2008年)。彼の名をそのまま映画のタイトルに冠した「イヴ・サンローラン」(ジャリル・レスペール監督兼共同脚本)は、彼の華麗なるキャリアの裏に隠された人生の影の部分に光を当てた伝記ドラマだ。

 主演のピエール・ニネ(25)は、作中のサンローランが本人にまるでうり二つと話題となったことに言及し、「僕自身は似ていると意識したことがありません。パリで行われたあるパーティーの席上、参加者の一人から1度だけ『君は似ている』とずばり言われたことはあります。でも、彼はひどく酔っぱらっていたので、僕は気にも留めていませんでした。僕にサンローラン役のオファーがあったのはその3年後のこと。彼は慧眼(けいがん)の持ち主でしたね」と懐かしそうに振り返った。

 歩き方など再現

 本作はサンローランとその世界に何もかも近づけようと、微に入り細をうがって、努力がなされている。公私ともにサンローランのパートナーだったピエール・ベルジェ(83)が映画化に全面協力し、イヴ・サンローラン財団所有のアーカイブ衣装を貸し出したのもその一つだ。ニネが役作りに当てた準備期間も5カ月間におよび、「これまで出演した映画では経験したことがないほど長期にわたるものでした」という。大勢のコーチからは、サンローランの歩き方、話し方、光を受けて浮かび上がるシルエットにいたるまで徹底的に再現することを求められた。

 声も作り上げた

 当然ながらニネ独自の努力も人格改造といっていいほど過酷なものだった。残されたサンローランの映像を目に焼き付け、内気さ、癖の研究をしただけでは終わらない。「iPodにサンローランの肉声をインポートして毎日2時間も3時間も聞き続けました」。聞き流すだけといった生やさしいものではなく、意識を集中させて自分の脳内に内在化させる。語学の集中特訓といった趣なのだ。作中の声はニネの地声ではなく、研究の結果、人工的に作ったものだった。

 そこまで自分を追い込んだのは、「18歳の青年時代から、次第にアルコール、薬、セックスのとりことなっていく、見るも痛々しい46歳までのサンローランを、年代ごとに演じ分けなければならなかったから」。あまりに役作りにのめり込み過ぎた結果、最後には自分の演技を客観視できないほどサンローランに一体化できたという。

 映画学校の教師を父に持つニネは、幼少時から演劇に興味を示し、演劇学校へ通った。11歳で初舞台を踏み、21歳のとき、史上最年少でパリの国立劇団「コメディ・フランセーズ」の準座員になった。舞台で培った演技経験は、後に進出した映画、特に「イヴ・サンローラン」での役作りで役立ったそうだ。「若くして僕は舞台で古典作品の大役を任せてもらいました。それらはとても複雑な人物像で、フランスの映画界が若い俳優にオファーする役どころをはるかに超えたものでした。僕は役作りのメソッドや演じ方はすでに分かっていました」

 期待にも対処できる

 本作への出演を契機に知名度が世界的に高まり、若手実力派、ニネに寄せる周囲の期待も一層大きくなった。常にプレッシャーに苦しんだサンローランを念頭にこんな決意を語った。「信頼できる友達や家族がいれば対処できるでしょう」。次回作では海洋学者で映画監督のジャック=イヴ・クストーの伝記映画で主演を務めるほか、TVシリーズでは監督にも挑戦。目下、スランプの付け入るすきはなさそうだ。9月6日から角川シネマ有楽町ほか全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS

 ■Pierre Niney 1989年3月13日、パリ生まれ。2007年「Nos 18 ans」で映画デビュー。11年の初主演作「J’aime regarder les filles」と12年「Comme des fr?res」でセザール賞有望新人男優賞にノミネート。13年にヴィルジニー・エフィラと共演したコメディ「20 ans d’?cart」が大ヒット。

 【STORY】

 1957年、パリ。クリスチャン・ディオール(1905~57年)の亡き後、21歳の若さで後継者に指名されたイヴ・サンローラン(ピエール・ニネ)は、初のコレクションを大成功に導き、華々しいデビューを飾った。芸術家の活動を支援していた26歳の実業家、ピエール・ベルジェ(ギョーム・ガリエンヌ)はサンローランの才能にほれ込み、すぐに2人は恋に落ちる。ほどなくサンローランは兵役のためフランス軍に入隊。1カ月もたたないうちに神経衰弱に陥り、軍の精神病院に入院する。除隊後、病気を理由にディオール社から契約を解除されると、サンローランは闘おうとするベルジェに「僕たちのメゾンを持とう」と提案し、イヴ・サンローラン社を設立する。やがてサンローランはファッション界の頂点を極めるのだが…。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年9月10日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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