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本能的な恐怖に… 一気読みの快感味わって 「ギフテッド」著者 山田宗樹さん
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着想から十数年を経て本作を完成させた山田宗樹(むねき)さん。「テーマはもちろん『一気読み』です!」=2014年8月5日(塩塚夢撮影)
ベストセラー『嫌われ松子の一生』などで知られる作家、山田宗樹さん(48)の新刊『ギフテッド』が刊行された。未知の臓器を持って生まれた人類「ギフテッド」をめぐる、一気読み必至の近未来型ミステリーだ。
アメリカに住む13歳の少年の体内に未知の臓器が見つかった。以降、同様の臓器を持つ子供たちの存在が相次いで確認される。いつしか彼らは、羨望とおそれを込めて「ギフテッド」と呼ばれるようになった-。
着想は十数年前。「新聞でがんの特集記事を読んだんです。がんはもちろん怖い病気だけど、未知の臓器に変化しうる存在かもしれない。そこからアイデアを得て一旦プロット(あらすじ)を作ったのですが、どうもありきたりなストーリーしかできなかった」。以来、心の引き出しにしまわれていたアイデアが日の目をみたのは、2012年に刊行された『百年法』がきっかけだった。「新技術で不老を与えられるかわりに100年後に死ななければならない」という設定で、少子高齢化などさまざまな社会的問題を問うた。「『百年法』を書けたことで、以前から温めていたアイデアをものにできるのではないかと自信を持てた」
一度は挫折しながらも、諦めなかった。なぜか。「『未知の臓器』というテーマは、他の人が扱っている形跡がない。じゃあ、僕が書くことになるんだろうな、と」
プロットは当初の構想から大幅に変更した。国の政策により思春期を隔離されて育ってきた「ギフテッド」たちだが、未知の臓器による影響は何も見られない。いつしか社会は彼らを差別するようになっていた。そんなとき、1人の「ギフテッド」の特殊能力が覚醒し、彼らを虐げてた若者22人が命を落とす事件が発生する。これを機に、人々はギフテッドへの恐怖を暴走させていく-。
異物を排除しようとする社会と、それに対抗して過激さを強めていくギフテッド。その構造を裏打ちするため、テロリズムやカルト集団などをめぐる社会心理学の資料を読み込んだ。
「個人だけの物語におさまっていては、深みは出ない。社会のあり方そのもののストーリーにしないと迫力は出せない。ギフテッドに対する周りの反応の異常性は、人類の本能的な恐怖。それを克服するのは理性です」
『嫌われ松子~』のようなヒューマンストーリーから、『百年法』や本書のようなSFミステリーまで。作品の幅が実に広い。「アイデアを考えているときに、自分の中でジャンル分けはしていません。こだわるところは『一気読み』してもらえるかどうか。ネタ選びから文章まで、すべてはそれを実現するためにやっている」
原体験は20年前に読んだ大沢在昌さんの『新宿鮫』。「それまではあまり本を読んでいなかったんですが、『新宿鮫』を読んだとき『これが一気読みの快感か』と思った。そういう体験を自分の読者にも味わってもらうことを常に目指しています」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
「ギフテッド」(山田宗樹著/幻冬舎、1700円+税)