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「取らない」ではなく、上手に食べる 「炭水化物の新常識」著者 大和田潔さん
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
ここ数年、話題となっている糖質制限ダイエット。でも、最近は「糖質制限は体に悪い」という反論も出てきたりと、結局何が正解か分からない。そんな混乱に終止符を打つ決定版が登場した。医師の大和田潔さん(49)らが監修した『炭水化物の新常識』だ。ごはんやパンなど、炭水化物との適切な付き合い方を教えてくれる。
「今、糖質制限をめぐる議論が混乱の時期にさしかかっている。長期的に実践できる方法を記した本が必要だろう、ということで企画されたのが本書です」。糖質制限を礼賛するのでも、悪者にするのでもない。バランスのとれた内容に仕上げている。「糖質は活動しやすい体を作るには必要なものです。一切糖質を排除してしまうと、エネルギー欠乏・ガス欠になってしまい十分な運動量を継続できなくなる。本書で提案しているのは、『上手にごはんを食べましょう』というシンプルなこと。運動を支えられる糖質を確保したうえで、タンパク質と脂質で補う方法です」
一切炭水化物を取らないダイエット方法は長く続けるには難しく、中断するとリバウンドしてしまう。本書では、「夕食のご飯の量を半分にする」「食物繊維の多いおかずから食べ始める」「野菜、きのこ、海藻類を積極的に食べる」といった、「ゆるい糖質制限」の食べ方やコツを紹介している。「食べない我慢よりも、大事なのは食べる工夫。インスリンへの依存から脱出して、いかに食生活を適正な糖質量にもどすか。ソフトランディングの方法でもありますね」
クリニックに勤務している管理栄養士による1週間の献立表や、城西大学薬学部の金本郁男教授が監修した血糖値を上げにくい食物(低GI食)の選び方も加えられているなど、実生活で役に立つ工夫が随所にこらされている。「読むというよりは、使ってもらう本」と大和田さん。外食が多い現代人にとっては、居酒屋やファミリーレストラン、中華料理店、ハンバーガーショップと、シーン別に「おすすめメニュー」「控えたいメニュー」が具体的に示されているのも便利だ。
充実した内容でありながら、飽きさせない文書と構成。SANKEI EXPRESSでの連載をはじめ多数の医療コラムや書籍で培ってきた筆力がそれを支えている。「医療の専門知識と、一般の方の理解を橋渡しするのが自分の役割だと思っています。例えば、『疾病』という言葉一つにしても、『病気』と分かりやすく言い換える。『ためになる』と『楽しい』を両立させ、どんどん読み進めてもらえるような推進力を持った文章を書くことを心がけています」
「秋葉原駅クリニック」の院長として、管理栄養士らと連携し、食事処方や運動方法の指導を行うことで「健康な体づくり」に取り組んできた。「体が変われば、人生そのものが変わる。病気を良くするというよりも、患者さんの人生がより良いものになるように共に戦っていきたい」。食事を変えて、体を変える。そこから始まる人生がある。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)