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科学
炭水化物依存からの離脱 大和田潔
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2014年6月に拙書『炭水化物の新常識』(永岡書店)が出版され、幸いにも重版が決まりました。食事と運動のコツについての本です。脂肪を減らそうとして、体の生理学をきちんと踏まえずに食事制限を行うのは危険です。筋肉も減るために、体力のない代謝の悪い体になってしまいます。筋肉量を維持することは、運動能力を支えるためにも、エネルギーを消費する代謝活動のためにも重要なことです。
私は、この本のお話をいただいたときに、体重を落としてやせるだけでなく運動のことも書き加えたいとお願いいたしました。肥満の度合いにもよりますが、食事制限だけで体重を減らし続けることは限界があるからです。
肥満が高度な場合は、まずは食事制限です。炭水化物を減らすだけでなく、食事全体の総カロリー量を減らして体重を減らす必要があります。体重が減少してきたら、心臓や関節に負担をかけない程度に運動を加えていきます。
この本は、「いまさら聞けない! 糖質制限ダイエットのギモン」で始まっています。糖質制限のメリットとデメリットについて触れました。炭水化物は消化されてブドウ糖になり、膵臓(すいぞう)からインスリンを分泌させます。インスリンには糖を体の細胞内に取り込ませる作用があります。摂取するエネルギーが余剰になると、細胞内の糖は脂肪に変わり、蓄積されていきます。
また、炭水化物を絶え間なく食べていると「炭水化物依存」という状態になります。インスリンが常に出続けているので、血糖値が少し下がることで不快感や強い空腹感が出るようになります。通常の量では空腹も収まらなくなり、間食も増えていきます。炭水化物制限は、こういった依存症からの離脱に有効です。
一方で、炭水化物が毒であるかのように忌み嫌うことはよくありません。筋肉を動かしてトレーニングするためには、炭水化物をきちんと食べる必要があります。マラソンの高橋尚子さんは、トレーニング量が多いことで有名です。炭水化物もよく食べていて、レースの前にはお餅を食べたりしています。インスリンは決して「肥満ホルモン」ではなく、生命維持や日常の活動に必須のホルモンです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)