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「大好きな曲」でデビュー55周年CD ピアニスト 中村紘子さんインタビュー
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「55年はあっという間でした」と話す、ピアニストの中村紘子(ひろこ)さん=2014年7月22日(江原和雄撮影) 「55周年がついこの間のようです。地球の自転が早くなったのかしら(笑)。古希の自覚は全くありません。55年はあっという間でした。子供のときの夏休みは長くて、どうしていいか分からなかったのに(笑)」
今年、デビュー55周年となり、7月に古希(70歳)を迎えたピアニスト、中村紘子はこう語る。
慶応義塾中等部3年のとき、第28回音楽コンクールにおいて史上最年少で優勝。翌年、NHK交響楽団の世界一周公演のソリストに抜擢(ばってき)され、デビュー。その後、第7回ショパン・コンクールにおいて日本人で初めて入賞し、活躍の場を世界に広げた。日本を代表するピアニストの一人として常に第一線に立ち続けている。
このほどデビュー55周年記念のCDが、ドリーミュージックからリリースされた。「大好きな曲」というモーツァルトの協奏曲2曲と、初めて録音したショパンのマズルカ集の2枚組だ。
モーツァルトの協奏曲は第24番と第26番。若手の山田和樹が指揮する横浜シンフォニエッタが伴奏をしている。今年2月、山田と初めて共演したことがきっかけとなった。
「ベートーベンの『皇帝』を共演したのですが、意気投合し、山田さんの才能と人柄にぞっこんになりました。音楽に格調があります。背伸びしてよく見せようとせず、自然体でした。彼とならモーツァルトが演奏できるんじゃないかと、思ったのです」
第24番のカデンツァ(オーケストラなしで即興的に演奏する部分)は、中村と親しかった“モーツァルト弾き”リリー・クラウスの作曲したもの。第26番のカデンツァはあの新垣隆に作曲を依頼した。
「ひらめいてお頼みしました。性格が控えめな方です。モーツァルトの作品の一部であることの違和感がないように作られました。録音に来て、非常に感動し、参加させていただいてありがとうございました、とおっしゃっていました」
これまで50枚以上のレコード・CDを録音しているが、ショパンのマズルカは初めて取り上げた。マズルカはショパンの故郷ポーランドにルーツを持つ舞曲。
「モーツァルトと一緒の録音でしたので、ショパンはマズルカしか考えられませんでした。マズルカはショパンの個人的な独り言のような作品です。マズルカを弾いていると、ショパンを身近に感じます。『4つのマズルカ作品68』(遺作)は、病気が進んで起き上がれない時に作曲されました。ショパンが残した最後の音楽です」と話す。
この秋もたくさんのコンサートでスケジュールが埋まっている。コンクールの審査員などで、若い音楽家の演奏に接することも多い。
「リストのソナタを弾ける人でもマズルカは弾けません。ショパンのエッセンスが凝縮した作品ですから、それを表現するにはイマジネーションが必要です。詩を歌うように、一つ一つの音に千の思いを込めなければいけません。演奏家というのは人の耳と心に音をさらして成長します。24時間練習しても演奏家にはなれません。コンサートの前は常に受験前の学生みたいな気持ちです。それがエネルギーになっています」(月刊音楽情報誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄/SANKEI EXPRESS)