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アップル決算好調、揺れるサムスン

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アップル決算好調、揺れるサムスン

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 米アップルがスマートフォンの新機種「iPhone(アイフォーン)6」と「6プラス」の好発進を背景にして過去最高の決算をたたき出した。不振が続くタブレット型端末のテコ入れも打ち出し、収益拡大を加速させる考えだ。一方、このアップルの快進撃にあおりを受けた韓国のサムスン電子は苦境に立たされている。サムスンはスマホ市場で最大のシェアを握ってはいるが、アップルが今後もサムスンの牙城を切り崩すことになれば、負のスパイラルに追い込まれる可能性もある。

 「史上最高のスマホ」

 「アイフォーン6シリーズはアップル史上最速の販売ペースを打ち立てている」

 アップルの最高経営責任者(CEO)、ティム・クック氏(53)は今月中旬、カリフォルニア州の本社での新製品発表会で約1カ月前に発売が始まった新製品の快進撃に満足げな表情を浮かべた。

 9月中旬に発売されたアイフォーン6シリーズはわずか3日で1000万台以上の販売を記録。米メディアでは「史上最高のスマートフォン」との評価も高まる。10月20日に発表された2014年7~9月期決算はその追い風を受けた好決算だ。売上高は前年同期比12.4%増の約421億ドル(約4兆6000億円)、最終利益は12.7%増の約84億ドル(約9100億円)で、いずれも7~9月期としては過去最高の数字だ。

 またアップルは販売減少に苦しむタブレット型端末「iPad(アイパッド)」の新製品の販売も開始。来年初めには腕時計型端末「アップル・ウオッチ」の販売も控え、創業者のスティーブ・ジョブズ前CEO時代の遺産頼みの経営からの脱却も視野に入れている。

 かたや6割の減益

 一方、このアップルの勢いに押されているのがサムスンだ。7日に発表した7~9月期決算(暫定集計)では、本業のもうけを示す営業利益が約4兆1000億ウォン(約4200億円)で、1年前の約10兆2000億ウォンから6割も減少する結果となった。スマートフォンの販売が低価格の中国製品との競合で苦戦したうえ、アイフォーン6シリーズの販売開始を見込んだ買い控えの影響も受けたとみられる。

 サムスンはスマートフォンの大画面化で先行して世界シェアの約25%を握り、約12%のアップルを大きく引き離している。しかしアイフォーン6シリーズは画面の大きさでサムスンに追いついており、販売が本格化している10~12月の決算ではさらに大きな余波を受けるとみられる。市場関係者からは「サムスンのこれまでの高い利益率は例外的なものだった。今までのようなサムスンの優位が続くとは考えにくい」との声もあがる。

 部品事業拡大に活路

 こうした苦境からの脱却策としてサムスンが打ち出すのが、もう一つの収益源である半導体などの部品事業の拡大だ。決算発表の前日には、ソウル近郊に15兆6000億ウォン(約1兆6000億円)を投じ、半導体の新工場を建設する計画も打ち上げた。価格競争で利益率が小さくなっているスマートフォンに比べ、技術力や規模の大きさといった優位がある部品事業ではまだ利益率を維持できているという事情もある。

 ただしサムスンの部品事業は販売先におけるサムスン自身のスマートフォン事業の比率も高く、スマートフォンでの不振が部品事業の業績にも波及する可能性がある。米紙ウォールストリート・ジャーナル紙は部品事業へのシフトについて「コモディティー(汎用品)化した製品を作るメーカーになる流れを加速することになる」と否定的だ。

 アップルは製品やサービスでのブランド力だけでなく、基本ソフト(OS)やコンピューターとの連携、音楽やアプリなどの配信から収益を生み出すビジネスモデルで、サムスンとは一線を画している。米国内ではサムスンの李健煕(イ・ゴンヒ)会長(72)の健康問題がサムスンの経営の推進力に影を落としているとの見方もある。

 アップルとサムスンはスマートフォンの技術に関する特許権をめぐる訴訟合戦を世界中で繰り広げてきた因縁の間柄。勢いに勝るアップルが足下が揺らぐサムスンに深手を負わせる可能性もありそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・にのりお)/SANKEI EXPRESS

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