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黒人音楽追求 再び武道館 THE BAWDIES
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4人組ロックバンド、THE_BAWDIES(ザ・ボゥディーズ)=2010年7月16日(提供写真) THE BAWDIESは、特異な人気バンドである。歌詞を英語のみで歌い、サウンドは現在の日本のロックシーンでは珍しいゴリゴリした本場顔負けのロックンロールである。ビートルズの初期のサウンド、マージー・ビートを硬質かつパンク風にした感じだ。そのルーツを即座に言い当てられるロック・ファンはほとんどいないはず。メンバーのボーカリストでベーシストのROYはいう。
「アメリカのザ・ソニックスというバンドに出会い、そのすばらしさを広めようと思ってやっているサウンドなんです」
そこそこロックを聴いているサエキもザ・ソニックスを知らなかった。調べてみると、米国ワシントン州タコマ市を中心に1960年から60年代いっぱい活躍した知る人ぞ知るビート・バンドだ。聴いてみると、低音のドスの効いたソウルフルな歌唱法に耳がいく。たしかにROYにそっくりなのである。
「有名ではないバンドですが、その圧倒的なサウンドに惹かれ、それを再現できないか?と同級生4人で3年間も練習して、活動を開始しました」
ルックスやファッションは、60年代の英国から世界に広がったモッズ・ムーブメントを思わせる。
「モッズともいえますが、立ち位置はガレージ・ロックだと思っています。日本でいえば、ジャッキー&セドリックスやThe 5.6.7.8’sといったバンドですね」
The 5.6.7.8’sはタランティーノ監督の映画「キル・ビル」に出演した女性ロック・バンドだが、ガレージというジャンルがどういう音か、ご存じない読者も多いだろう。パンクに似ているがよりエレキ・ギターの音色が多様に凝っており、ドラムパターンがさまざまという感じだろうか? そうしたマニアックなロックでメジャーデビュー2年後の2011年には1万2000人以上の動員で超満員の日本武道館公演を成功させたのはなぜか? その鍵は質実剛健でコクがあり、スピード感あふれ、まとまって一丸で攻めるサウンドと、特異な低音を生かしたROYのボーカルにあるのだろう。ザ・ソニックスの他には何が参考になってるのか?
「ルーツ的にはレイ・チャールズやリトル・リチャード、その後の音楽ではディープ・ソウルといわれるジャンルです」
ザ・ソニックス自身が尊敬した1950年代発の黒人系ロック歌手はわかるが、ディープ・ソウルという用語がまたわからない。
「O.V.ライトなどのサザン・ソウル的な70年代以降の黒人音楽を指します。サザン・ソウルといえば米国南部に限定されますが、出身地にとらわれず、そうしたコクのあるボーカルスタイルを持つソウル音楽のことです」
ものすごいマニアック。それを弱冠31歳の若者たちが志すとは。そのインパクトを聞きつけ、あの英国ロックのカリスマ、ポール・ウェラーからも共演の依頼を受けたという。
「都合が合わなかったんで、残念ですがお断りしました」
なんということだろう? ポール・ウェラーは、ザ・ジャムというバンドでモッズの教祖的な存在だが、ザ・ジャムはTHE BAWDIESと比較したくなるパンキッシュなサウンド。参考にはしなかったのだろうか?
「一瞬だけ聴いて、聴くのを止めました。とらわれたくなかったんです」
わが道が果てまで鮮明に見えているTHE BAWDIESは、このあふれる情報社会で、重戦車のように一本道を突っ走っている。そのスタイルの探求は、今までの日本にも、いや世界にもなかったもので、海外からも引き続き大注目の存在となっており、来年3月29日に再び日本武道館公演が決定した。(アーティスト・作詞家 サエキけんぞう/SANKEI EXPRESS)