ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
米国98兆円…高級ブランド狙う同性愛者市場 ティファニーが男性カップル起用
更新
首都ローマで開かれた同性婚をテーマにしたファッションショー。ファッションブランドを中心に同性カップルをターゲットにした広告などが活発化している=2014年10月23日、イタリア(AP) 創業178年の米老舗宝飾品ブランド、ティファニーが初めて広告写真に同性カップルを起用し注目を集めている。世界各国で同性婚を合法化する動きが広がるなか、米国ではアパレル最大手のGAPやサングラスのレイバンなどファッションブランドを中心に同性カップルの広告起用が活発化。「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)」といった「多様な性」を支持する姿勢を打ち出すと同時に、米国内で年8300億ドル(約98兆円)に上るとも試算される巨大なLGBT市場を取り込みたいとの思惑もある。
「今の時代、結婚への道のりはもはや直線的ではありません。真の愛というものは、多様な形態の愛の物語から生まれるものなのです」
婚約指輪の広告写真に男性同士のカップルを起用したティファニーの北米PR部門の副社長、リンダ・バックリー氏は1月9日付の仏ファッション誌エル(電子版)で、性の多様化についてこう指摘。「わが社の婚約指輪は彼らが生活を共に創出するための物語の最初の一文であり、そうしたメッセージを今回の広告写真で知ってほしかった」と、その狙いを説明した。
米メディアによると、広告写真はドイツの有名ファッションカメラマン、ピーター・リンドバーグ氏(70)が撮影した。
建物の屋上や走行中のオープンカー、自宅のソファなどを舞台に7組のカップルが登場しうち1組が男性同士のカップル。ニューヨークの住宅の玄関の階段に座っている白黒写真の2人は私生活でもカップルだという。子供を連れて結婚式に臨むカップルの写真もあり、多様な家族の形態が広がっていることも表現した。
米ファッションブランドではニューヨークに拠点を置くJ・クルーが、2011年に初めて同性カップルを広告に起用したとされる。バラク・オバマ大統領(53)が歴代大統領として初めて同性婚を支持した12年には、カジュアルウエアのGAPとサングラスのレイバンが追随した。
GAPは、1着のTシャツを男性カップルが一緒にすっぽり被る巨大広告を街中に掲示。レイバンは「NeverHide(決して隠さない)」と題したキャンペーンでポスターにスーツ姿の男性2人が手をつないで歩く写真を使った。昨年はカリフォルニアを拠点とするアパレルブランドのバナナリパブリックが男性カップルの広告写真を使用したほか、大手量販店チェーン、ターゲットは男性の同性婚カップルとその子供の家族を描いたCMを放映した。
こうした動きの背景には、性の多様化を支持するメッセージに加え、LGBTと呼ばれる人たちの高い購買力がある。
米紙USATODAYが伝えたマーケティング会社ウィテック・コミュニケーションズの調査結果によると、全米の同性愛者を中心とするLGBTの成人は全成人の6~7%に当たる1500万~1600万人に上り、イリノイ州の全人口を上回っている。
その年間購買力(市場規模)は8300億ドルと、全米50州中4位のフロリダ州全体の年間生産高を上回るという。
別の調査では市場規模がこの4年間で300億ドルも増えており、成長力も抜群。「独身時代が長かったため可処分所得が多いほか、美的感覚やセンスに優れ、ファッションリーダーとしての情報発信力も高い」(業界関係者)と注目されている。
老舗ティファニーの起用を受け、LGBT市場を狙ったマーケティング戦略がさらに加速しそうだ。(SANKEI EXPRESS)