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【まぜこぜエクスプレス】Vol.42 万華鏡のような天才少女 シンガー・ソングライター 佐藤ひらりちゃん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.42 万華鏡のような天才少女 シンガー・ソングライター 佐藤ひらりちゃん

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クルクル回転する万華鏡のように、多彩な表情をみせてくれる、マジカルな天才少女、佐藤ひらりちゃん=2015年1月9日(渡辺達生さん撮影)  生まれつき全盲というハンディをもつ13歳の佐藤ひらりちゃんは、卓越した歌唱力と表現力で、多くの人をとりこにするシンガー・ソングライターだ。昨年11月、ミニアルバム『なないろの夢』(シンコーミュージック・エンタテイメント)でメジャーデビューを飾り、人気急上昇中のひらりちゃんの魅力に迫る。

 すてきなギャップの連続

 「パシャりーみん」

 「写真撮るよー」と声をかけると、両手で作ったハートマークを胸にニッコリ。東京・秋葉原のお気に入りのメイドカフェの、お決まりのかけ声だと教えてくれた。メイドカフェ、初音ミク、美空ひばりさんの話題になると、すさまじいマシンガントークになる。「あのね、あのね!」「聞いて聞いて!」。身ぶり手ぶりも激しく、見えていない瞳もくるくる動く。そのおちゃめで天真爛漫(らんまん)なはしゃぎっぷりに、最初は驚いた。

 というのも、友人に勧められて聴いたCDは、13歳とは信じがたい大人びたメッセージを放っていたからだ。たっぷりの声量、伸びやかな音域、老成しているともいえる歌詞。生まれつき障がいとともに暮らしてきたひらりちゃんは、わたしたちには計り知れない苦労もしてきたはず。何か達観しているのかもしれない。随分大人っぽいんだろうなぁ。勝手なイメージをふくらませながら、デビューアルバム『なないろの夢』の発表をかねた、インストアライブにお邪魔した。「こんにちは」と声をかけると、まるで久しぶりに会うめいっ子のようにフレンドリーで、とってもキュート! ココロのバリアをたちまち乗り越える天性の人懐こさをもっている。

 「短波ラジオ」、初音ミクを歌わせるキーボード「ポケット・ミク」、カエルのパペット型楽器「ケロミン」。彼女のリュックの中には、音の出る玩具がいっぱい。「音」は彼女にとって大切な遊び友達なのだろう。次から次へと取り出して遊び方を教えてくれた。

 「音楽を倍速で聴くのが好き」という。「どうして?」と聞くと、「ピロピロピロピロッていう宇宙空間みたいな機械音が大好きなんだよねー。ほら!」と実演してくれ、ケラケラと笑う。「ステージでやらないの?」と聞くと、「失神しそうなくらいうれしくなるから、ダメなんだよね」と屈託がない。彼女の脳内も倍速なのだろうか。頭の回転が速く、素晴らしいひらめきで答えを返してくる。作品からは想像できないユニークなキャラクター。CDとのギャップがあまりに大きかった。

 そしてステージは…というと、これまた「天才少女」の本領発揮で、実にプロフェッショナルなのだ。しっかりしたMC(司会進行)。エモーショナルな弾き語り。その表情はすでに立派なアーティストだ。観客の心を一瞬にしてつかんだ。もちろんわたしも、たちまち大ファンに! なんてすてきなギャップの嵐なのだろう。 

 気持ちを歌にしてきた

 ひらりちゃんの魅力は、瞬時に変わる万華鏡のようだ。1月に都内で開催されたプライベートなライブのリハーサルでは、鉄道の車内や駅で流れるBGMを次から次へとピアノで弾いてくれた。絶対音感のあるひらりちゃんは、なんでも耳コピーで再現してしまうのだという。

 「最近作った歌は?」と聞くと、照れながら、佐藤ひらりの歌を歌ってくれる。「佐藤ひらりはできません~♪ 何をやってもできません~♪ やればやるほどできません~♪」。思わず自分の名前に変えたくなる! 「もっと!」とリクエストすると、チョコレートが溶ける歌、数学(小学生の時は算数だったらしい)キライの歌。「全部いい! 本番でも聞きたーい」。私たちの無責任なリクエストに、「まぁ。なごませプログラムってやつです」と実にクール。思わず笑ってしまった。

 驚きの天才少女は、「短い歌ならパーって作っちゃう」という。母親の絵美さんが「保育園のときには既に『ほうれん草の胡麻和え』という歌を作っていた。小さいときから自分の気持ちを歌にしてきたんだと思う」と教えてくれた。

 「普段の自分をステージでは出さないの?」と聞けば、「ステージではスイッチが入るんです」とプロ意識をみせる。「いろんなひらりちゃん、見せちゃおうよ」とそそのかすと、「変になりすぎると危険でしょう。危ないところまで来ているからね」と冷静だ。「いろんな面が融合したとき、ますます面白くなるのじゃないかな」と、見守る絵美さんのまなざしは温かい。

 「歌が大好き。大人から子供までみんなが口ずさんでくれるような、そんな歌がつくりたい」というひらりちゃん。可能性無限、伸びしろたっぷりの13歳。ファンの一人としては、これからの進化、変化も楽しみだ。

 (女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/撮影:フォトグラファー 渡辺達生/SANKEI EXPRESS

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