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キューバに「映像の楽しみを」 米配信大手 自由化見越しサービス開始
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キューバでのサービス開始を発表したネットフリックスの本社=2011年4月22日、米カリフォルニア州ロス・ガトス(AP) 米動画配信大手のネットフリックスが9日(米時間)、キューバでサービスを開始したと電撃発表した。米企業がキューバに本格進出する初めての事例だという。国交正常化交渉開始に伴い米政府はキューバへの経済制裁の一部撤廃を表明しており、キューバ国民のネット閲覧が近く自由になることを見越して9日からのサービス開始に踏み切った。ただ社会主義国で庶民の暮らしは貧しく、利用者が思惑通りに増えるかはなお不透明だ。
「世界中で愛される映像作品をキューバの人々がやっとネットフリックスで楽しめるようになり、喜んでいます」
ネットフリックスのリード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO、54歳)は9日に発表した声明でキューバでのサービス開始をこう祝福した。
ネットフリックスの中南米での会員数は約500万人。人口約1100万人のキューバは中南米でのサービス拡大を目指すネットフリックスにとっては魅力的な市場で、ヘイスティングス氏は「キューバは素晴らしい映像作家と芳醇(ほうじゅん)な芸術文化を有しており、われわれはいつか、キューバのそうした映像芸術作品を全世界5700万人の会員に伝えたい」と最大限の賛辞を贈った。
米業界紙デイリー・バラエティや米紙USATODAY(いずれも電子版)などによると、キューバでのサービスは米国と同じ内容で、月7.99ドル(約950円)を支払えば映画やテレビドラマがネット経由で見放題となる。決済方法はクレジットカードやデビットカードだが、米政府による経済制裁の緩和で一部のクレジットカードが利用可能となり、メドがついた。
ネットフリックスは1997年の設立以降、定額で好きな映像作品をパソコンやタブレット端末などを使って場所を選ばず楽しめることを強みに、ビジネスを急拡大させてきた。昨年には独、仏、スイスなど欧州にも進出し、今や約50カ国でサービスを展開している。今年上半期には豪州とニュージーランド、今秋には日本でもサービスを始める予定で、2年後に200カ国でのサービスを達成する計画という。
ネットフリックスの“売り”の一つが、既存のテレビドラマや映画だけでなく、独自のコンテンツを見られることだ。2013年にはデビッド・フィンチャー監督(52)や米俳優、ケビン・スペイシーさん(55)らが製作総指揮を務める政治ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を製作して配信。膨大な利用者データを基に決定したドラマの内容や配役が高く評価され、ネットドラマとして初めてこの年の「プライムタイム・エミー賞」を獲得した。
米国での勢いそのままに他社に先駆けてキューバ市場に殴り込みをかけたネットフリックスだが、課題も少なくない。現在、キューバでネットにアクセスできる人は全人口の約4分の1にとどまり、動画を満足に閲覧できる環境にはない。
社会主義国ならではのネット検閲もあり、ネット検閲監視団体フリーダムハウスによると、検閲を受けていない利用者は全体のわずか5%。さらに月額利用料の7.99ドルはキューバ国民の平均月収(20ドル=約2400円)の約4割と極めて高額だ。
「コカ・コーラの工場も、マクドナルドの店もつくったって構わない」。キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(88)の息子、アレックス氏はこう強調するが、実際に採算が取れるかは進出企業の力量次第となりそうだ。(SANKEI EXPRESS)