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アカデミー「多様性」消えた 人種問題や政治色後退に批判も
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4部門でアカデミ-賞を受賞し、このうち3つのオスカー像を手に喜びの表情を浮かべる「バードマン_あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のハレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督=2015年2月22日、米カリフォルニア州ハリウッド(ロイター) 米映画界最高の栄誉とされる第87回アカデミー賞の授賞式が22日(日本時間23日)、米ハリウッドで行われ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督(51)の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が作品賞を受賞した。今回のアカデミー賞はノミネートの段階で主演男優・女優、助演男優・女優の各賞候補が全て白人だったため、米国の人種的多様性を反映していないという非難が授賞式前から出ていた。黒人差別解消などを目指した1950~60年代の米公民権運動を扱った「セルマ(原題)」が主要賞で唯一、作品賞にノミネートされていたが、結局受賞を逃し、最後までこうした批判を覆せなかった。
メキシコ人であるイニャリトゥ監督は作品賞に加え、監督賞なども受賞。舞台でオスカー像を手に「この賞を、私の仲間であるメキシコ人にささげたい」と訴えた。ただ、これも監督一流の皮肉だったようで、「多分、米政府は来年のアカデミー賞で移民(を規制する)ルールを作るだろう。2年連続でメキシコ人が監督賞を獲るなんて怪しいだろ?」と冗談を飛ばした。
アカデミー賞監督賞のメキシコ人による受賞は、昨年「ゼロ・グラヴィティ」でメガホンを取ったアルフォンソ・キュアロン監督(53)が初めて。昨年は作品賞も、米国の黒人奴隷制度が題材の「それでも夜は明ける」が黒人監督作品として初受賞を果たし、「白人優位の男社会」と揶揄(やゆ)されてきたハリウッドの大転換を印象付ける一大イベントになった。
背景には、2013年7月にアカデミー各賞を投票で決める映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の会長に黒人女性のシェリル・ブーン・アイザックスさんが就任したことがある。アイザックスさんは黒人初の会長として、賞に人種や価値観の多様性を反映させるため、白人以外の若手新会員を積極的に増やしたとされる。
ただ、昨年の受賞結果はさすがに性急過ぎたと判断したようで、その反動か、今年は人種問題や政治色のある作品を逆に避ける傾向が強まった。
クリント・イーストウッド監督(84)の「アメリカン・スナイパー」も前評判は高かったが、映画のテーマはイラク戦争。米国内で左右両派の論争を招くなどした“政治性”が嫌われ、結局作品賞の受賞を逃している。
一方で、「アメリカン・スナイパー」は音響編集賞、「セルマ」は歌曲賞を受賞。話題作を広く主要賞以外の各賞で処遇するバランス感覚も発揮された。
「バードマン」は、かつてスーパーヒーロー映画で脚光を浴びた落ち目の俳優がブロードウェーで再起をかけるダークコメディー。長編アニメ賞にノミネートされていた高畑勲監督(79)の「かぐや姫の物語」は受賞を逃した。受賞したのは「ベイマックス」。短編アニメ賞で候補入りしていた米在住の堤大介、ロバート・コンドウ両監督の「ダム・キーパー」も選に漏れた。(SANKEI EXPRESS)