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【世界ノルディック】歓喜、驚愕、失望… ジャンプの醍醐味

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【世界ノルディック】歓喜、驚愕、失望… ジャンプの醍醐味

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ジャンプ混合団体で銅メダルを獲得した日本の(上から)高梨沙羅、葛西紀明、伊藤有希(ゆうき)、竹内択(たく)=2015年2月22日、スウェーデン・ファルン(共同)  ノルディックスキーのジャンパーが飛ぶ姿は、いつ見ても美しい。技術的にはさまざまなチェックポイントがあるはずだが、素人目には難しい。

 見た目にも美しいジャンプは必ず飛距離を伴うが、飛びすぎたジャンプは、美しく降りることが困難となる。なんとも厄介な競技でもある。

 テレビの中継画面では高々と飛んでいるいるように見えるジャンプだが、実際には恐ろしいほどの高速で落ちている。助走路でスピードを蓄えての踏みきり角度も下向きだ。遠くへ飛んでみえるのは、風をスキーと体にはらんで落ちるのを遅らせているためだ。

 高々と飛翔してみえる錯覚はそのままに、見る人はジャンパーに夢を乗せて感動したり驚愕したり、あるいは歓喜したり失望したりする。それがこの競技の醍醐味でもある。

 スウェーデンのファルンで行われているノルディックスキーの世界選手権のジャンプ混合団体で、前回優勝の日本(高梨沙羅、葛西紀明、伊藤有希(ゆうき)、竹内択(たく))は銅メダルを獲得した。

 金メダルは、ノルウェーとの激しい優勝争いを制したドイツだった。日本は4位に水を空けて悠々とメダルを獲得したが、金メダル争いには加われなかった。

 レジェンド、42歳の葛西はノーマルヒル35位の不調をひきずり、「メダルを取れてよかったが、金メダルを取れなくて悔しい気持ちの方が強い」。ノーマルヒル女子個人銀メダルの伊藤も距離をそろえることができず、「他のメンバーのおかげで取れたメダル。私のせいでメダルの色が変わってしまったのがすごく残念」と悔やんだ。

 エース級の2人が不出来でも銅メダルを楽々取ったところに日本の強さはあるといえるのかもしれない。

 札幌五輪で金銀銅を独占し、長野五輪の男子団体では感動的な金メダルを獲得した日の丸飛行隊。男子に世界のレジェンドを、女子に高梨という絶対エースを抱えた布陣は頼もしいが、平昌冬季五輪に向けては、多少の不安もある。

 ≪日の丸飛行隊、少し優しすぎないか≫

 ファルンで行われているノルディックスキーのジャンプ混合で銅メダルを獲得した日本は、記念写真に収まった。満面の笑顔は高梨沙羅、Vサインは葛西紀明。硬い笑みは伊藤有希で、竹内択に笑顔はなかった。

 混合団体では高梨が一人、大ジャンプを2本そろえ、各国女子エースを並べたトップで2本とも1位となった。

 だが個人戦では、ワールドカップの連戦連勝で臨んだソチ五輪同様、メダルを逃して4位に沈んだ。「やるせない気持ちでいっぱい」と涙をこらえるような表情も浮かべたが、競技直後にはメダルを確定させた伊藤のジャンプに「感動しすぎて涙が出てきた」と飛び上がって喜び、表彰式では盛んに伊藤の姿をカメラに収めていた。

 仲間思いの素晴らしいエピソード。だが例えば葛西は団体メンバーを外された長野五輪で、ライバル原田雅彦のジャンプに「落ちろ」と念じたという。自身、当時の葛西に「ばかやろうと言ってやりたい」とおどけながら、あの悔しさが現在の自分を作ったとも話した。

 唯我独尊のジャンパーとして、高梨は優しすぎないか。

 原田に落ちろと念じた葛西も今や土屋ホームでは監督兼任。所属の伊藤が取った銀メダルに「泣いてしまって自分のジャンプどころではなかった」と話した。それがノーマルヒル、混合団体の失速に直結したわけでもなかろうが、ソチ団体でみせた涙とともに、こちらも優しくなりすぎてはいないか。

 高梨の陰に隠れ、「ずっと悔しい思いばかりしてきた」という伊藤はようやく個人戦で花を咲かせたが、混合団体でみられたように、まだまだ安定感に欠ける。

 ノーマルヒルでも混合団体でもきれいなジャンプをそろえた竹内は逆に安定感、安心感は抜群だが、最終ジャンプでは爆発力もみたかった。

 4人目の最終ジャンプ。首位と0.6点差のノルウェーはベルタが95.5メートルの大ジャンプでプレッシャーをかけたが、ドイツの最終ジャンパー、フロイントは96メートルで逃げ切った。そんな劇的ジャンプを竹内に期待する。(EX編集部/撮影:共同、ロイター、AP/SANKEI EXPRESS

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