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「いつもそばに」東北に寄り添う 「スタンド・バイ・ミー」のベン・E・キングさん死去

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「いつもそばに」東北に寄り添う 「スタンド・バイ・ミー」のベン・E・キングさん死去

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昨年2月にインタビューに答えるベン・E・キングさん=2014年2月16日、東京都港区(三尾郁恵撮影)  映画の主題歌にもなった「スタンド・バイ・ミー」で世界的に知られる米ソウル歌手のベン・E・キングさんが4月30日、76歳で亡くなった。これまで十数回の来日公演を行った親日家で、東日本大震災の被災地に思いを寄せ続けてきた。来年3月には本人の強い希望で、東北6都市でコンサートを開くことも決まっていた。昨年2月の来日の際のインタビューでは、「『スタンド・バイ・ユー(いつもそばにいるよ)』と被災者の皆さんに伝えたい」と話していた。

 カバーは400超

 1938年に米南部ノースカロライナ州で生まれ、9歳でニューヨークに移住した。50年代に米黒人グループ「ドリフターズ」で活躍し60年にソロ活動を始めた。翌年発表した「スタンド・バイ・ミー」が大ヒット。86年には同名映画の主題歌にも使われた。

 75年に元ビートルズのジョン・レノンさんがカバーしたほか、ブルース・スプリングスティーンさんやレディー・ガガさん、忌野清志郎さんら世界中のミュージシャンが歌い、カバー曲の数は400以上とされる。今年3月には、米議会図書館が曲の録音を文化的、歴史的に重要な価値があるとして保存すると発表していた。

 被災地で学生らと交流

 日本との縁は深く、震災後には「スタンド・バイ・ミー」の日本語版や坂本九さんの「上を向いて歩こう」などを収めた復興支援アルバム「ディア・ジャパン」(ユニバーサル ミュージック)を発表。テレビ番組の企画で被災地を歩き、ジャズ喫茶や東北大学のジャズオーケストラと交流した。

 最後の来日公演となった昨年2月のインタビューでは「津波の様子を自宅のテレビで見て心が痛んだ。僕を必要としてくれるならいつでも駆けつけて、『スタンド・バイ・ユー』と皆さんを元気づけたい。音楽は心を動かし癒やし、何かをもたらしてくれる」と話していた。

 昨年3月には米南部ニューオーリンズで復興支援コンサートを開催。ジャズの発祥地であるこの街も2005年のハリケーン・カトリーナで大きな被害を受けており、「2つの地域は傷みも苦しみも悲しみも同じ。両方に手をさしのべたい」と考え企画した。公演には米国在住のミュージシャン、大江千里さんも参加した。

 「何度歌っても飽きない。カバーで一番好きなのは、ジョン・レノン。完全に自分の歌にしている。同じ曲が、発表した時、ジョンのカバー、映画の主題歌と3回もヒットしてスタンダードになりラッキーだった」と、名曲について語っていた。

 来日公演へ準備中

 震災から5年となる来年3月には仙台、山形、郡山など東北6都市での復興支援コンサートと、東京と大阪での公演が予定されており、8月には東京、大阪、北海道、愛知、広島などを回るツアーも企画されていた。関係者によると、数日前まで元気な様子だったという。

 来日公演の招聘(しょうへい)元で20年来の付き合いがあるユニオンアーティストの原一社長は「とても残念です。追悼ライブを企画したい」と話した。

 全ての人に同じ態度で接し、静かで優しい。節くれ立った大きくて温かい手のひらと、笑うとクシャクシャになる笑顔が印象的な“レジェンド”だった。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS

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