言葉の力借り 心の奥底へ潜る 「ムーンナイト・ダイバー」著者 天童荒太さん
更新水底へ、深く-。まもなくあの震災から5年。直木賞受賞作『悼む人』をはじめ、人の苦しみと悲しみを深く見つめてきた作家、天童荒太(てんどう・あらた)さん。最新長編『ムーンナイト・ダイバー』では、震災後も手つかずのまま置き去りにされた海の底へと潜る男を通して、愛と生を問うた。水底と陸上、闇と光、生と死、こちらとあちら-。対極するものをつなぐ、静かな祈りが、新たな文学として結晶した。
シンプルに、強く
《眠気を誘う穏やかな海の上にのぼった立待月が、闇の底から町をすくい上げる。》
静謐(せいひつ)かつ端正な文体。一読して、これまでの天童作品とは違うトーンに気付かされる。「変えようと意識したつもりはないのですが、作品そのものがこのようなストレートな表現を求めていたのだと思います。これまでの僕の作品は、過去や現在を縦横無尽に張り巡らせた技巧的なものが多かった。特に前作『歓喜の仔』では、一面的なものにNOを突きつけ、あえて読者をカオスに引きずり込むような手法をとりました。しかし、今回は、とにかく言葉をシンプルに、強く。言葉に迷うよりも、表現し尽くす。『潜心する』というイメージです」


