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高速路線バス“戦国時代”へ 走るゲーセン、豪華個室…サービス向上にシフト

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高速路線バス“戦国時代”へ 走るゲーセン、豪華個室…サービス向上にシフト

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宇宙船にみたてたウィラー・トラベルのアトラクション型バス「スターファイター」の車内(同社提供)  長距離移動の足として人気を集めた「高速ツアーバス」が転換期を迎える。群馬県藤岡市の関越自動車道で昨年4月に死傷者45人を出したツアーバス事故をきっかけに、高速ツアーバスの業態は今月末で廃止され、8月から安全規制が厳しい「高速路線バス」に統一される。先発の路線バス業者との競争で苦境が予想される中、高速ツアーバス会社はアトラクション装備や豪華設備の車両拡充などで生き残りに挑む。

 まるで走るゲーセン

 ツアーバス最大手のウィラー・アライアンス(東京)は8月から、アトラクション型バス「スターファイター」を大阪・京都-広島間で高速路線バスとして運行する。バスを宇宙船に見立て、乗客は海賊と戦ったり、隕石(いんせき)の危機から逃れたりと、まるでゲームセンターのような趣向だ。

 車内では座席の前方、側面のモニターと天井のスクリーンが連動し、宇宙ツアーを演出。座席に設置されたレバーを操作し、参加者が協力してミッションに挑戦する。「200キロ以下の移動では『高速バスは安くても時間がかかる』との声が多く、移動時間を楽しめるようにした」(担当者)という。

 今春の大阪-名古屋間などでの運行は好評だったという。大阪・京都-広島間の運賃は最安で片道4100円と、通常のバスと同じ。設備にコストをかけながら運賃を据え置くのは、同社のファンを増やしたいという狙いがあることにほかならない。

 木製個室で新幹線より安くLCCより快適に

 海部観光(徳島県)が運行する「マイフローラ」は、木製の仕切りで個室のような座席を備える。

 大柄な男性でもくつろげるように広いスペースを確保し、定員は12人と通常のバスの3分の1以下だ。広いトイレ、着替え用ルームなどのぜいたく感で人気があり、同社は8月以降の台数拡充を検討中だ。

 徳島-東京間を片道1万3千円で運行しており、8月以降も運賃を据え置く方針だ。鉄道で徳島から東京へ行く場合、岡山へ出て新幹線に乗るのが一般的だが、運賃は約2万円。マイフローラは通常の高速バスより数千円高いが、新幹線よりは安上がり。快適性が加われば検討に値する移動手段だ。

 ただ、格安航空会社(LCC)を利用した空路を挟む移動と比べると、マイフローラはやや分が悪い。LCCの関西国際空港-成田空港間の運賃は安ければ3千円台で、徳島-関空間の移動にかかる料金次第ではトントンか、マイフローラの方が割高になるかもしれない。所要時間も空路利用の方が短い。

 一方、マイフローラは夜行バスのため、乗り換えなし、寝ていれば着く-という簡便さがある。料金、時間、移動のてまひまの3要素が、利用者のてんびんにかけられそうだ。

 規制強化後は戦国時代へ

 高速ツアーバスは旅行会社が貸し切りバスを使い、企画旅行として乗客を集める形態で、コースや料金を自由に設定できるため、低運賃で需要を掘り起こした。平成16年の利用者は2万3千人だったが、22年には約260倍の600万人と急拡大した。

 しかし関越道事故などをきっかけにさまざまな問題が浮上。8月からの路線バスへの一本化では、本来不要だった停留所での乗降が義務付けられ、各社は停留所の確保が必要になった。

 さらに運転手の数や労働時間規制などによる負担増で、ツアーバス会社の多くは撤退するとみられている。国土交通省によると、昨年9月にツアーバスを手がけていた旅行会社とバス会社は計286社だが、今年5月末で新制度に移行するとしたのは111社にとどまった。

 安全確保によるコスト増と大手路線バス会社との競争激化に対し、“残留”を決意したツアーバス会社は次の一手に必死だ。

 ウィラーは新たな料金割引制度やサービス向上で利用拡大を図る考えだ。海部観光も「車両の差別化で乗車率を高めたい」とする。

 これまで価格破壊を中心に路線バスを猛追してきたツアーバス会社だが、今後はサービス向上に足場を移す。バス業界全体の競争激化は必至。高速バスの“戦国時代”は新たな局面に入りそうだ。(中村智隆)

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