【試乗インプレ】気分は「プロジェクトX」 トヨタ記念館で自動車産業の奥の間を覗く
更新鍛造というのは金属加工方式の一つで、高温に熱した金属をハンマーなどで叩いて、素材の密度を高めることで強度を増す手法。日本刀を作るときなどに使われる手法でもある。
現在は完全に機械化されているこの工程も、創業時の1930年代は職人の勘を頼った手作業。ハンマーは機械だが、それを動かすタイミングや相方との間合いなどは完全にマニュアルである。工程は重さの異なる3つのハンマーを使って、少しずつ形を整えていく。すべてのハンマーが動態展示となっていて、「シュポ!ガコン!」と盛大な作動音を館内に響かせながら動く。
こんな小さな部品一つ作るのにこれだけの人知、手間、労力が費やされているわけで、クルマ全体の部品数を想像しただけで、気が遠くなってしまった。同時に、そういった気が遠くなるような無数の工程の積み重ねの上で完成する自動車とは、あるいは奇跡の乗り物ではないかと感動した次第である。
トヨタESVなんてクルマあったっけ?~代表車種~
最後は各時代の代表車種の展示。カローラ、コロナ、セリカにプリウス、セルシオとおなじみの車種がずらりと並ぶが、一際異彩を放つ一台がある。トヨタESV。なんじゃそりゃ?聞いたことないぞ、と思うのも当然。市販車ではなく「実験安全車(ESV)」という研究用の車両である。
ESV(Experimental Safety Vehicle)というのは、1970年に米運輸省が提唱したクルマの安全技術水準向上を図った計画。この計画の仕様を参考に、日本政府が策定した仕様に則ってトヨタが開発したのが「ESV」というわけ。
最初から市販を目標とせず実験に最適な形状とした結果、本来カッコいいはずの2ドアクーペながら、えらく不格好。正直、出来そこないフィアット・X1-9にしか見えない。
しかし、この実験で衝撃吸収ボディや、ESC(ブレーキの電子制御による走行安定システム)、エアバッグなど、衝突事故時の乗員の安全に寄与するさまざまな技術の知見が蓄積され、その後の市販車の装備として実用化、トヨタ車の評価を高めることに大いに貢献した。そういう意味では、もっとも産技館らしい展示車両と言える。




















































