【試乗インプレ】初のターボ化、屈曲路で見せる鋭いターン ポルシェ「911カレラ」(前編)
更新滑らかなシフトフィール
さっそくギアを1速に入れ、クラッチをミートさせてからアクセルペダルを確かめるように押し込んでいく。エンジンは瞬く間に2000回転、3000回転と上昇し、メーターパネルには2速への変速を促す「▲」マークが表示される。流れに乗せて2速、3速へとシフトアップ。再びギアを落として、地下3階の駐車場から螺旋スロープをぐいぐいと駆け上がっていく。低速でもきつい傾斜をものともしないトルクの太さはさすがだ。
地上に上がりアクセルを開放する。3速、4速、5速…。回転域や速度域を問わず、アクセルを少し踏んでやるだけでシートの後ろから力強くプッシュしてくれる加速フィールがすこぶる気持ちいい。クラッチは想像通りの軽さだ。例えばホンダのS660やスズキのスイフトスポーツのような小排気量で気軽に乗れるライトウェイトなMT車よりは押し戻す力が強いが、本格的なスポーツクーペのわりには反力が軽くて扱いやすい印象だ。シフトフィールもかなり滑らかで、ショートストロークのシフトレバーはノブを少し押してやるだけでスパン、スパンと気持ちよくゲートに吸い込まれていく。プロ級の腕前を持つ人なら、PDK並みに素早いギアチェンジができそうだ。
NAからターボへ
先に触れたとおり、エンジンは従来の3.4リッター水平対向6気筒NAから、3リッター水平対向6気筒ツインターボへと置き換えられている。ターボ化により小排気量でもNAと同等の高出力を可能とし、先代を20馬力上回る370PS(272kW)/6500rpmを達成した。最大トルクも450Nm/1700-5000rpmの幅広いバンドを誇る。特に低回転域から発揮する圧倒的なパワーはこのクルマの大きな魅力だ。
この強力な動力を少しも余すことなく効率的に路面に伝達できる理由の一つが、911伝統の「リヤエンジン・リヤドライブ」(RR)という駆動方式だ。念のため説明すると、RRとはエンジンを後輪車軸より後ろに搭載した後輪駆動車のこと。エンジンの重さが後輪の駆動車軸に直接かかるためトラクションに優れ、パワーのロスが少ない。ブレーキング時には重心が前方に移動するため4輪をバランスよく制動できるといったメリットもあるのだ。