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日本でも? 英独「スタバ・Apple納税を」 多国籍企業、租税回避の実態
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英国とドイツの両財務相が、コーヒーチェーンのスターバックスやIT企業の雄、アップルなど、米国に本社を置く巨大多国籍企業の行き過ぎた租税回避行為に対抗するため、国際協力体制の構築を呼びかける異例の共同声明を発表した。
欧州では、債務危機の深刻化で緊縮財政を余儀なくされ、増税や社会保障費のカットを行う国も少なくない。このため、商品を販売した国で税金を納めようとしない多国籍企業への不満が一気に高まっている。
共同声明を発表したのは、英国のジョージ・オズボーン財務相(41)とドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相(70)。
11月5日付英紙デーリー・テレグラフによると、2人は「国際的な課税体系は、電子商取引の拡大といったグローバルなビジネスの活発化で変わらざるを得ない状況にある」としつつも、「英国とドイツは法人税率の引き下げで多国籍企業を誘致するなど、競争力のある法人税制を目指すが、多国籍企業には営業活動を行っている国で納税してもらいたい」とくぎを刺した。
多国籍企業の租税回避がクローズアップされたきっかけは、先月(10月)15日にロイター通信が配信したスクープ記事だ。
1998年に英国に進出し、現在735店を展開するスターバックスの英国法人が、進出以来、総額約30億ポンド(約3840億円)の売り上げがありながら、支払った法人税はたった860万ポンド(約11億100万円)で、さらにここ3年間では、計12億ポンド(約1536億円)の売り上げがあったのに、法人税を全く支払っていなかったことが明らかになった。
ロイター通信は、英国スターバックスが、コーヒー豆をスイス・ローザンヌにある子会社を通して購入し、オランダで煎った後、英国に持ち込むなどの方法で利益を分散し、可能な限り納税を回避していたと報じた。
英国スターバックスは2009年と10年に税務調査の対象となったが、広報担当者はロイター通信に「違約金の支払いなどもせず解決した」と述べ、問題はなかったと強調した。
今月(11月)4日には、英BBC放送や英紙ガーディアンが「iPhone(アイフォーン)」の好調が続く米アップルの租税回避について相次ぎ報道。今年9月29日までの1年間に、海外で総額368億ドル(約2兆9484億円)の利益があったが、納めた法人税は7億1300万ドル(約571億円)、税率にしてわずか1.9%しかなかったことが、米証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書で明らかになったと伝えた。
この2社以外でも、米フェイスブックや米アマゾンといった名うてのIT企業が英国で大胆な租税回避を行っていることが明らかになっている。
英国のデービッド・キャメロン首相(46)は先月(10月)、こうした企業の実名を挙げたうえで、「行き過ぎた租税回避で英国が莫大(ばくだい)な不利益を被っている」と不快感を表明した。
今のところ、日本では同様の事実は問題化していないが、日本の法人税の実効税率は約4割と、3割以下の英国やドイツをはるかに上回っている。
財政状況の悪化で、2014年4月に消費税率が引き上げられるなど、国民の負担が増す中、自分が購入した商品を販売した企業が日本に法人税をちゃんと納めているか、消費者はもっと関心を持つ必要があるかもしれない。