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「リフレ」強まり金融緩和加速 日銀人事で東京市場 円安好感し続伸
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25日の東京金融市場は、日銀の新体制で金融緩和が進むとの見方から円相場が1ドル=94円台に下落し、円安を好感して日経平均株価も大幅続伸した。政府が日銀総裁、副総裁に起用する意向を固めた黒田東彦アジア開発銀行総裁と岩田規久男学習院大教授は、金融緩和を通じて物価を引き上げることで景気回復につながると唱える「リフレ派」に属する。国会同意を経て黒田、岩田両氏が正副総裁に就けば、日銀は1月に導入した2%の物価目標の早期達成に向け、金融緩和を一段と加速させそうだ。
積極緩和派の黒田氏と岩田氏の起用方針は「リフレ色が強い印象」(SMBC日興証券の宮前耕也エコノミスト)を与え、東京外国為替市場では緩和期待から一時1ドル=94円半ばまで円が下落。これを受けて株高も進行し、平均株価の終値は約4年5カ月ぶりの高値水準となり、終値ではリーマン・ショック後の高値を更新した。前週末の日米首脳会談で、日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉に参加する見通しとなったことも輸出関連株の買いにつながった。
日銀は現在、国債の買い入れを緩和策の中心としており、「次の一手」ではこの拡大を予想する見方が多い。日銀は2010年に創設した資産買い入れ基金で、償還までの残りの期間が3年以内の国債を買っているが、これを5年程度まで延長する手段が最有力とみられている。より長い期間の金利を下げることで、企業が借り入れやすくなる利点が期待されている。
また、黒田氏は今月11日にフジサンケイビジネスアイなどとのインタビューで「国内にはまだ買うべき資産が山ほどある」と指摘。具体的には、社債や株価指数連動型上場投資信託(ETF)などリスクのある資産の買い入れ額を増やしたり、買う対象とする資産の幅を広げる議論が加速する可能性がある。
1月に日銀は安倍晋三首相の要請を受け入れ、2%の物価目標導入を決定。達成時期について、黒田、岩田両氏とも2年程度が適切との見方を示している。
ただ、無理に達成時期を区切れば金融政策の運営が物価に偏り、柔軟さを損なう恐れがある。加えて、日銀が積極緩和で大量の国債を買い入れることが「財政ファイナンス(政府の借金の穴埋め)と受け止められれば国債価格が暴落(金利は暴騰)しかねない」(大手証券)との懸念もある。
人事案に衆参両院が同意すれば、次期正副総裁による日銀の新体制が発足するのは3月20日。最初の定例の金融政策決定会合は4月3、4日だが「スピード感を重視するなら、3月中に臨時の決定会合を開くこともありえる」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との声もあり、新体制が打ち出す緩和強化策が注目される。
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■日銀正副総裁人事に対する市場関係者の見方
◆コメント
<今年7月までのドル円相場(1ドル)予測>
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◆宮前耕也・SMBC日興証券エコノミスト
黒田氏と岩田(規久男)氏が入ったことで「(金融緩和で物価を引き上げ、景気回復を図る)「リフレ」色が強い印象。両氏は着目する金融政策のアプローチは異なるが、総合すれば(資産買い入れの拡大などで)日銀のバランスシートは拡大しやすくなるのではないか
<90~100円>
◆嶌峰義清・第一生命経済研究所首席エコノミスト
財務官を務めた黒田氏は日銀、政府、財務省の連携が取れ、諸外国にパイプも持つことから施策遂行の障害を越えるのに強い。岩田氏は経済学の裏付けのあるこれまでにない施策を打ち出すことが期待され、中曽氏は日銀内の細やかなことに精通するバランスの要となりうる
<91~96円>
◆広木隆・マネックス証券チーフ・ストラテジスト
黒田氏は国際組織でのトップ経験があり、対外調整力に優れ、岩田氏は強力なリフレ派。両氏で正副総裁が実現すれば、実現可能性の高い組み合わせではベストに近い。日銀執行部内でも積極金融緩和を求める動きが強まるだろう
<現値~110円>