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【底流】合従連衡が進むFX “巨人”ヤフー参入で旋風

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【底流】合従連衡が進むFX “巨人”ヤフー参入で旋風

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 取引業者の淘汰やM&A(企業の合併・買収)による合従連衡が進むFX(外国為替証拠金取引)に、インターネット業界の“巨人”が参入した。ポータル(玄関)サイト最大手のヤフーがFX事業を買収し、圧倒的な知名度とサイトの利用者数を生かし、業界に旋風を巻き起こす。足元の円安や、スマートフォン(高機能携帯電話)の普及を背景に、FXの取引市場は活況を呈しており、ヤフー参入で競争はさらに激しさを増しそうだ。

 ヤフーの野望

 28日、ヤフーと、スマホ用無料通話アプリ(応用ソフト)「LINE」を提供するNHNジャパンとの業務提携の発表会場。プレゼンテーション用の大画面に映し出された、パートナー企業のロゴの中に「サイバーエージェントFX」(サイバーFX)があった。

 発表会で、ヤフーの宮坂学社長は「最も優れた解答を持っている企業と組むことで、それを利用者に提供していく」と述べ、大胆な事業再編への野望を隠さない。

 ヤフーは平成24年度、電子商取引やスマホ向けゲームの共同開発、食品宅配サービスなど、異業種と共同でさまざまな事業に乗り出した。

 若者や主婦層に浸透しつつあるFXもその一つだ。ヤフーは昨年12月、インターネット広告事業などを運営するサイバーエージェントから210億円でFX事業を買収することで合意した。FXを足がかりにインターネットでの金融事業を展開するつもりだ。

 サイバーFXの社長に就任した伊藤雅(まさ)仁(ひと)氏は、金融やインターネットの業界で実績を積んできた。伊藤社長は「ヤフーがやるからには業界首位を目指す。数年内には実現したい」と意気込む。

 スマホ普及も後押し

 FX市場は活気づいている。昨夏から秋にかけて、為替相場の動きが小さいため売買高が低空飛行を続けていたが、11月中旬から始まった「安倍相場」で状況が一変。東京金融取引所のFX「くりっく365」の2月の1日平均取引数量は約35万枚と、約1年3カ月ぶりの高水準だった。

 矢野経済研究所が集計した2月のFX企業ランキングでは、サイバーFXは売買高と預かり証拠金残高で3位、口座数で4位。いずれも首位と開きがある。

 ただ、業界関係者は「ヤフーの参入は衝撃。大きな脅威だ」と警戒する。実際、サイバーFXがヤフー傘下で新スタートを切った2月の預かり証拠金残高の増加率は5・3%で、矢野経済が調べた12社の中で最高だった。

 サイバーFXの強みは、家庭と職場を合わせた1カ月の利用者が5千万人近いポータルサイト「ヤフー!ジャパン」を活用できることだ。買収決定後の昨年12月中旬からキャッシュバック、2月からはヤフーのサービスに使えるポイントをプレゼントするなどのキャンペーンを相次いで実施。

 株価や企業情報などを配信する「ヤフー!ファイナンス」はサイバーFXのサイトと直結し、大手の安心感を背景にFX未経験者を投資に呼び込んでいる。

 スマホの普及も、FXの増加を後押ししている。関係者によると、FX全体に占めるスマホ経由の割合は1年前の1割弱から、足元では3割程度まで上がっている。サイバーFXは平成21年から、スマホ向けのFX取引用応用ソフト「Cymo(サイモ)」の提供を始めており、伊藤社長は「ヤフーとの連携でさらに強化できる」と話す。

 業界再編 

 一方、FX業界は監督官庁の金融庁による規制強化の波にさらされている。担保(証拠金)の何倍の取引ができるかを示す証拠金倍率(レバレッジ)の上限を引き下げられ、一攫千金のうまみがなくなったとして個人投資家が敬遠している。

 顧客を囲い込むため、取引手数料の引き下げ競争も続く。大手が本格的に海外進出に乗り出すなど競争がグルーバル化すれば、体力差が物を言う。業者の淘汰が進み、勢力図が塗り代わる可能性もある。

 IT業界の雄、楽天傘下の楽天証券は今年1月にFXサービスを一新。ドルとニュージーランドドルといった円を介さない通貨取引の組み合わせを拡充するなど、攻めの姿勢に転じた。

 GMOクリック証券を傘下に持つGMOクリックホールディングスは昨年9月、伊藤忠商事系のFXプライムを子会社化。DMM.com証券も、外為ジャパンのFX事業を買収するなど、業界再編の動きが続いており、ヤフーの参入が拍車をかけそうだ。(高橋寛次)

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