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インドネシア伝統回帰、バティック拡大 「世界遺産」認定で弾み
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バティックの愛好家たちが3月、日本大使公邸で各国大使夫人などを集めて開いた鑑賞会=ジャカルタ(「じゃかるた新聞」宮平麻里子撮影) インドネシアの伝統工芸として知られるろうけつ染め布地「バティック」を用いた衣料品の販売が伸びている。きっかけとなったのは、バティックが2009年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に認定されたこと。政府機関が毎週金曜日のバティック着用を奨励し、制服として導入する学校も増えるなど、伝統文化への意識が高まっている。
バティックの製作では、木製の棒の先に細い棒状の管の金具が付いた道具「チャンティン」で布地にろうを垂らし、手描きで柄をつけた後、染色していく。銅型押しの「チャップ」を使うこともあるが、手間がかかる手描きの方が値段が高い。
バティックはインド更紗(さらさ)の影響を受けてジャワ島から各地に広がり、民族衣装などに使われるようになった。モチーフは草花や動物など千差万別で地方ごとに特色がある。
シャツであれば、1000~2000円台が主流だが、シルクを使った手描きの高級ブランド品になると数万円のものまであり、値段の幅も広い。
生産者は家内工業規模の零細業者が多くを占めることから、政府も中小企業振興策として力を入れている。
近年、バティックを現代的なファッションに用いる若手デザイナーも増え、ファッションショーなども開かれるようになった。ジャカルタで開かれる物産展でもバティックを売る業者が増えている。展示会も頻繁にあり、ジャカルタのテキスタイル博物館では、地域やテーマごとに展示を行っている。
インドネシア商業省中小企業総局によると、昨年のバティック生産高は前年比12%増を記録。テキスタイル全体の伸びをはるかに上回ったという。
ジャカルタ中心部の中間層向けショッピングモール「タムリン・シティー」には、バティック製品の販売店を集めた「バティック・ヌサンタラ・センター」が設置され、多くの消費者を引き付けている。
同センターが開設された10年ごろから出店しているエドウィンさん(29)は「世界無形文化遺産となって以降、オフィスや学校で特定の曜日にバティックを着用する動きが広まり、国内需要は大きく伸びた」と話す。
エドウィンさんは、バティックの産地として知られる中部ジャワのプカロンガンで親の代からバティック製品の販売を手掛けてきた。
一方、バティック柄をプリントした数百円ほどの安価な模倣品も目に見えて増えている。エドウィンさんは「国内の業者数が急増し、模倣品も中国から流入してきているため、競争が厳しくなっている」と述べるなど、必ずしも順調に販売が伸びていない現状を吐露した。
バティックが国内外でブランド力を高めるためにも、政府機関などによる模倣品の監視・排除措置が望まれる。(インドネシア邦字紙「じゃかるた新聞」編集長 上野太郎)