SankeiBiz for mobile

「周りの国に迷惑だ」「大きな損失被った」 アベノミクスに手厳しい中国

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

「周りの国に迷惑だ」「大きな損失被った」 アベノミクスに手厳しい中国

更新

安倍晋三首相  【北京=矢板明夫】日中関係が悪化していることもあって、中国メディアは「ギャンブラー的な経済政策」「周りの国にとって迷惑だ」などと、アベノミクスに手厳しい。

 中国が最も気にしているのは円安による自国への影響だ。上海の地元紙、東方早報などは中国が2012年末に保有する日本国債が20兆円を超えたことを指摘したうえで、「アベノミクスによる円安で中国は大きな損失を被った」と主張、「安倍内閣の経済政策は債権国に対し無責任だ」と断じている。

 経済評論家の張茉楠氏はアベノミクスを見る限り「少子高齢化問題に対応できていない」とし、日本にとっても「プラスではない」と主張している。

 ユーロ圏経済では批判の声も

 【ベルリン=宮下日出男】債務危機で低迷するユーロ圏経済では、外需頼みが続き、ユーロ高を招いたアベノミクスの金融緩和には「為替操作」との批判も上がった。特にドイツは懐疑的で、主要8カ国(G8)首脳会議でも日本の金融政策を協議する考えを示している。

 一方、経済低迷が深刻な国からはその効果が注目もされている。フランスのオランド大統領は「経済成長に焦点をあてねばならない欧州にとりよい知らせ」と一定の理解を示す。もっとも構造改革の先行きへの不安も強い。仏紙ルモンドは内容が不十分として「長期的効果には注意した方が賢明」と強調。英紙フィナンシャル・タイムズは国内の抵抗を懸念し、欧米との自由貿易協定も効果が薄れる恐れなどを指摘している。

 米国「税制改革など不十分」

 【ワシントン=柿内公輔】同盟国として信頼関係を修復した米国はアベノミクスへの関心が高く、その成功に期待を寄せる。戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン日本部長は「安倍氏は1期目は経済政策で焦点を絞れなかったが、今回は金融緩和と財政刺激による成長を力強く打ち出した」と評価する。

 だが、株安も踏まえ、米メディアは「市場の興奮は冷めつつある」と分析。成長戦略には「既視感もある」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と辛口だ。

 ヘリテージ財団のデレク・シザーズ上席研究員は「規制緩和と税制・労働市場改革が足りない」と指摘。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「具体策の遅れが長引くほど、有権者が幻滅するリスクが高まる」としている。

 「『アベノミクス・ストーリー』ついえていない」

 東京株式市場で不安定な値動きが続く中、最大手の野村証券が逆に株価予想を引き上げるなど、証券各社は中長期的な上昇に強気の姿勢を崩していない。昨年11月から進んだ円安による企業業績の改善や、参院選後に安倍晋三政権が構造改革に踏み込むことへの期待が根強いからだ。

 「現時点では『アベノミクス・ストーリー』はついえていない」

 野村証券は13日、平均株価が843円安と今年2番目の下げ幅となったにもかかわらず、年末時点の予想値を従来の1万6千円から1万8千円へ、大幅に上方修正した。

 最大の理由は、円安による企業業績の改善だ。円相場は足元で上昇が目立つとはいえ、14日は1ドル=95円台で推移。昨年11月の1ドル=80円前後からみると依然、大幅な円安だ。一方で輸出関連企業の想定為替レートは90~95円が多く、業績の上振れが見込まれる。野村の田村浩道チーフ・ストラテジストは「7月から企業決算が本格化すれば、市場への注目が高まる」と、業績改善を好感した株買いが増えるとみる。

 足元で急落と乱高下を繰り返している株価だが、他の大手各社も、一本調子で上昇していたときの予想をほとんど変えていない。大和証券は、主要企業200社(金融除く)の平成25年度の経常増益率を37%増と予想。同社の三宅一弘チーフ日本株ストラテジストは「足元は為替の上下で株価も動くが、中長期的に強気のスタンスは変えない」と話す。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「参院選後、長期安定政権のもとで経済政策が実行される」と見込む。

 一方で、メリルリンチ日本証券の神山直樹株式ストラテジストは長期金利の上昇を懸念。「日銀は市場に対して丁寧な対応が求められる」と注文をつける。

ランキング