SankeiBiz for mobile

被災3県の地価高騰が鮮明に 被災者の生活再建にひずみも

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

被災3県の地価高騰が鮮明に 被災者の生活再建にひずみも

更新

住宅地の上昇率で全国1位となった大槌町大ケ口。新築住宅の建設が続いている=岩手県大槌町  東日本大震災の被災地では、震災から2年半が経過してもなお、住宅移転などで地価上昇が続いている。19日発表された基準地価では、前年比30.5%上昇して全国1位となった岩手県大槌町大ケ口(おがぐち)1丁目をはじめ、住宅地の上昇率トップ10のうち7地点が岩手県の沿岸部。宮城県石巻市や福島県いわき市もランクインし、被災3県の地価高騰が鮮明になった。

 更地が広がる大槌町にぽつんと建つプレハブの仮設店舗。町内に2社ある不動産会社の一つ、家子不動産には連日、移転先を探す住民が訪れる。同社代表の家子和男さん(64)は「残っている物件は条件が悪いか、売り主が高値設定しているものばかり。新しい物件にはすぐに買いが入る」と話す。

 同町大ケ口地区の基準地価は1平方メートル当たり2万2700円。同地区は震災前は基準地点ではなかったが、固定資産税評価額から推定された2010年の基準地価は1万3800円だった。

 津波被害のなかった同地区には、8月末に70戸の災害公営住宅が完成し、被災者の入居が進む。同じ地区内に約20戸の公営住宅の整備も計画されており、自力での住宅再建を希望する被災者も集中している。

 被災地の地価上昇について、岩手県地価調査岩手分科会の代表幹事、横田浩さんは「震災後に下落した価格が本来のレベルに戻った」と指摘する。ただ、実際の取引価格は、この「本来のレベル」を大きく上回る。

 津波被害を免れた町内の区域は、震災前は1平方メートル当たり2万円程度と、基準地価とほぼ同額で取引されていた。しかし、現在は約3万円に上昇。個人間の取引の場合は、約5万円と震災前の2倍以上の高値で売買されることもあるという。

 こうした地価高騰は資産価値の上昇という意味では朗報だが、被災者の生活再建にはひずみも生じる。

 大槌町では住宅再建のために国と県、町独自のものを合わせて600万円の補助を受けることができるが、土地は自前で取得しなければならない。だが、自力再建か公営住宅への入居かを決めかねている被災者も多い。

 災害公営住宅に入ると町独自の支援金200万円は受けられなくなる。このため、公営住宅に入るかどうかの判断を整備が終わるまで先延ばしにし、自前の住宅再建も見送る動きが出て、旺盛な新築需要を長引かせる半面、地価上昇を後押しし続けそうだ。(高木克聡)

ランキング