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停滞の大国尻目、カンボジア堅調 東南ア13年成長率 4.9%に下方修正
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アジア開発銀行(ADB、本部・マニラ)は、「アジア経済見通し2013年改訂版」を2日に発表した。同書は、4月に発表された13年版の予想経済成長率などを、実態に即して改訂するもので、13年の東南アジア10カ国の国内総生産(GDP)成長率予測を5.4%から4.9%に下方修正した。カンボジアの13年の成長率は7.2%と予測され、4月の発表時から修正はなかった。
「改訂版」によると、東南アジア10カ国の13年の成長率は4.9%だが、貿易と通貨下落が改善され、投資や輸出が回復すれば、14年には5.3%に上昇する見込み、としている。
今回の下方修正の理由としては、インドネシア、マレーシア、タイという域内大国の経済が軒並みふるわず、それぞれ下方修正されたことを挙げた。インドネシアの13年経済成長率は5.7%(4月は6.4%)、マレーシアは4.3%(同5.3%)、タイは3.8%(同4.9%)となっている。背景にあるのは、輸出の不振と投資の不調。これら3カ国は、パームオイル、ゴム、石炭、銅、コメ、家電製品など主要産品の輸出がふるわなかった。
逆に、東南アジアで目立って好調なのがフィリピン。13年の成長率は7.0%で、4月時点の6.0%が上方修正された。14年の成長率も5.9%から6.1%へと上方修正された。公共事業の伸びによるインフラ投資、民間企業投資とも順調であることが要因。
東南アジア域内大国が伸び悩むなか、カンボジアは予測通りの堅調な成長を続けている。13年の成長率は7.2%、14年の成長率は7.5%とそれぞれ予想され、4月時点からの修正もなかった。
堅調な成長の要因として改訂版はまず、カンボジアの主要産業である縫製業の輸出が13年上期(1~6月期)で約23億ドル(約2230億円)にのぼり、前年同期比で約11.3%の伸びをみせていることを挙げた。また、カンボジア政府が国を挙げて取り組む精米の輸出も、13年上期には前年同期の2倍近い約1億2200万ドルに拡大した。
輸出に加え、国内ではオフィスビルや商業ビル、ホテルやコンドミニアム(高級マンション)などさまざまな建物の「建築ブーム」が起きており、13年上期で市場規模が約19億ドルに達した建設分野が成長を牽引(けんいん)している。
また、13年上期にカンボジアを訪れた観光客は約210万人となり、前年同期より2割近く伸びている。観光客の増加に伴い、サービス分野の成長もみられる。農業分野も順調な伸びを示すと改訂版は予測しているが、カンボジア国内では現在、洪水の被害が少なくとも6州に拡大しており、今後の影響が懸念される。
ADBの経済成長見通しは、アジア太平洋地域の途上国(日本、オーストラリア、ニュージーランドを除く45カ国・地域)の経済を調査・分析したもので、毎年4月に発表され、同年後半に改訂される。今回の改訂版は、45カ国・地域全体のGDP伸び率を6.0%としており、4月の発表時より0.6ポイント下方修正した。ADBは「域内2大国である中国とインドの経済成長が予想よりも弱かったことと、米国の量的緩和政策をめぐる世界金融の不安定な動きが、アジア太平洋地域の成長に影響するのでは」と指摘した。
カンボジアにとって中国は、投資や援助で官民ともに経済活動には欠かせない存在になっている。改訂版では、中国の13年成長率は7.6%(4月は8.2%)、14年は7.4%(同8.0%)と4月時点から下方修正されている。カンボジアを含む東南アジア諸国にとって、主要な経済パートナーである中国のゆるやかな成長減速は今後も続くとみられ、それぞれが長期的な対応策を迫られることになるだろう。(月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)