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【躍動 メコン】メコン、ASEANの成長牽引

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

【躍動 メコン】メコン、ASEANの成長牽引

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 2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)市場統合を前に、大陸部にあるタイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、そしてミャンマーのメコン5カ国への注目が高まっている。安倍晋三首相は歴代首相としては初めて、就任1年でASEAN10カ国を歴訪。12月には東京で日ASEAN特別首脳会議と日メコン首脳会議を開催するなど同地域を重視する。総計で2億4000万人近い人口を抱えるメコン5カ国は今後の成長センターであると同時に、東西経済回廊、南部経済回廊が完成すれば、マラッカ海峡を通らずに東アジアと南アジアを結ぶ交易路ともなる。ASEAN域内にとどまらず、アジア太平洋地域、さらには世界経済を引っ張る成長の機関車にもなりうる。

 また、メコン各国では、中韓両国のような反日教育を行わなかったこともあり、対日感情は極めて良好だ。さらに各国政府も一層の成長を実現するには、工業化が不可欠として、日本からの技術移転に期待、日系企業の誘致にも極めて熱心だ。「チャイナ+1」としての中国の代替、補完地域というだけではなく、日本にとって新たな、そして有望な進出先であるメコン5カ国の魅力を、5回に分けて紹介する。(編集委員 宮野弘之)

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 □石川和秀・外務省南部アジア部長に聞く

 ■日本とウィンウィンの関係を

 日本の対ASEAN外交への取り組みと、メコン地域の持つ重要性などについて、外務省の石川和秀・南部アジア部長に聞いた。

 --メコン5カ国は、日本にとってどのような地域と位置づけられるのか

 「メコン地域は、アジアの東西を結ぶ陸上・海上交通の要衝にあり、同地域の平和と安定はわが国自身の安全保障上も極めて重要だ。歴史的にさまざまなつながりがあるうえ、対日感情も良好だ。地域および国際社会のさまざまな課題に、わが国と連携して取り組む余地が大きい」

 --経済的な重要性も増している

 「この地域は近年著しい経済成長を遂げ、21世紀の成長センターの一翼を担っている。豊富な天然資源や優秀な労働力を持っており、その潜在性には日本企業の注目度も高い。この地域の活力を日本経済に取り込み、ウィンウィンの関係を作っていくことが重要だ」

 --ASEANの市場統合のためには、メコン地域の底上げが重要だ

 「日本は、15年のASEAN共同体構築を支持しており、ASEANが一体性を高めるためにも、域内での均衡のとれた成長を後押しする必要がある。メコン地域は、インフラ整備が進み、域内の経済活動も活発化する一方で、依然、経済格差や連結性などの面で課題を抱えている。メコン地域の発展を支援することは、ASEANの均衡のとれた成長および地域統合を促すために不可欠だ。日本のメコン支援は、ASEAN全体ひいては東アジア地域全体の安定と繁栄にとって重要な貢献といえる」

 --今回、日ASEAN特別首脳会議とは別に日メコン首脳会議が開かれる

 「日本は、この地域をわが国経済協力の重点地域とし、日本・メコン地域諸国首脳会議を開催してきている。12年4月の第4回首脳会議では15年までの日メコン協力の方針として(1)メコン連結性の強化(2)共に発展する(3)人間の安全保障および環境の持続性可能性の確保-の3つの柱からなる『東京戦略2012』および『行動計画』を策定した。また、13年度以降3年間で合計約6000億円の政府開発援助(ODA)による支援を表明し、実施している。引き続き、東京戦略と行動計画に基づく日メコン協力を通じ、ASEAN共同体構築に貢献していく」

 ◆中国は建設的役割を

 --メコン5カ国に限らず、ASEANでは中国の影響力は大きい。その中国に、日本としてどう対応していくのか

 「中国とASEAN諸国は、さまざまな分野で深い関係があることは承知している。ASEANの対域外国貿易では、輸出入ともに中国が最大の貿易相手だ。また毎年、首脳級の交流の機会といえる中国ASEANエキスポも開催されるなど、政治的な交流も活発だ。日本としては、中国が責任ある大国としてASEAN地域においても建設的役割を果たすことを強く期待している」

 --中国と陸続きのメコン諸国では、中国の存在感はさらに大きい

 「メコン地域について言えば、日本と中国は共にこの地域の発展に協力している。例えば、日本は東西経済回廊、南部経済回廊を中心に、中国は南北経済回廊を中心に、それぞれ連結性を向上させる支援を行っている。日本と中国はメコン地域の現状認識に関する意見交換と相互の対メコン地域政策に関する情報共有のため、08年より『日中メコン政策対話』を行っている。今後とも中国を含むドナー(支援)国と連携し、この地域の発展に貢献していくことが日本の姿勢だ」

 --ASEANと中国との間では、近年南シナ海での領有権問題が大きな問題となっている

 「この問題はアジア地域だけでなく、世界の海洋秩序にも影響する国際社会共通の関心事項だ。日本としては、全ての関係国が関連国際法を順守し、一方的な行動を慎むべきであり、紛争は国際法に基づき平和的に解決されなければならないと主張している。この一環として、法的拘束力があり紛争解決にも資する実効性のある行動規範(COC)が早期に作成されることを期待している」

 ◆経済成長戦略の鍵

 --日本にとって、メコン5カ国を含むASEANの市場統合が持つ意味を改めて伺いたい

 「現在、ASEAN地域では、日本からの進出企業が約7000社、在留邦人が12万8000人以上いることからも分かるように、ASEANは日本企業の生産ネットワークの拠点であり、東アジア最大の投資先だ。さらには中国に次ぐ貿易相手だ。今後、相当の期間にわたって経済成長が見込まれ、わが国の成長戦略の鍵となる地域である」

 --環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などアジアを含む経済市場統合では、米中両国の思惑が異なる。日本としてこうした対立を避け、広域市場統合の実現に寄与するための方策は何か

 「TPPおよびRCEPはいずれも、アジア太平洋地域を広く包含する自由貿易圏であるFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に寄与するものだ。いずれの交渉にも参加する日本は、こうした経済連携が相互に刺激し合い、活性化することにより、世界全体の貿易・投資ルール作りが前進するよう、貢献していく考えだ。自由貿易の推進は、わが国の対外通商政策の柱であり、日本経済再生にも資するもの。力強い経済成長を達成するためにも、自由貿易体制をこれまで以上に強化し、諸外国の活力を、わが国の成長に取り込んでいく」

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