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海外情勢
【海外進出支援の現場から】海外現地法人 不正防止のポイントは
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荒木広一郎みずほ銀行直投支援部参事役 □荒木広一郎・みずほ銀行直投支援部参事役
【問題】
近年、企業規模にかかわらず海外現地法人を持つ会社が増えているが、一般的に海外現地法人で問題が発生すると発覚までに時間がかかったり、損失額が大きくなりがちだ。しかも、多くの会社が進出している中国では、法令順守強化の流れが出てきている。
にもかかわらず、(1)言語の障壁(2)法制度や文化・習慣が日本と異なる(3)海外現地法人の内部監査に対応できる専門スタッフがいない-など海外での内部監査体制が整っていない会社が多いのが実情のようだ。
【対策】
現場が直面する不正には(1)売上・売掛金の操作(2)代金回収プロセスの操作(3)資材の購入・売却時の操作(4)給与の操作-などがあるが、多いのが不正なリベート取引や納品時の商品量の調整(転売を含む)によるさや取りだ。その典型的なパターンと防止法を紹介する。
<発生パターン>(1)購買部門での物品購入時、購入額に多額のリベートを上乗せしていたり、部材の売却や処分の時に相場水準より著しく安価な値段で取引を行うもの。(2)部材などの発注量に対し、実際の納品量が著しく少ない。
いずれの場合も、後日、購買担当者と納入業者の間でリベート分のキックバックが行われたり、現地法人幹部が関わる場合には、納入業者を経由して贈賄などの資金作りに使われたりすることがある。
<発生原因と狙われやすい品目>多くの場合、商品の発注と承認が購買担当や経理部員の1人に任されており、相互牽制(けんせい)機能が効かないことがある。
仮に発注者と承認者が分離された承認プロセスが存在したとしても、承認者(多くが日本人駐在員)が部品の相場をあまり知らない場合や、発注者を必要以上に信頼している場合、承認プロセスが十分に機能しないことがある。
一方、不正の対象として、直接材料より補助材料や消耗品が狙われやすいという傾向がある。一般的に直接材料は金額も大きいため、日本本社や日本人派遣員の目が届きやすいが、補助材料の金額は安価なため、目に留まりにくい。消耗品に至っては、金額が小額でアイテム数も多く、数年で日本に帰任する派遣員が、現地の相場を把握するのは困難だ。
<防止策>大企業ではいざ知らず、中堅・中小企業の海外現地法人では多くの場合、派遣員は現地法人の社長や工場長などで多くて数人にとどまる。しかも営業や工場管理の仕事が中心で、経理実務はローカルスタッフに任せきりというのが現実だろう。
不正なリベート取引を防止する上では、発注と承認の権限を分離し、相互牽制を図ることが有効だが、社員の数に限りもあり、全ての企業にあてはまるわけではない。
そこで、全てにおいて万全というわけではないが、前述のパターン(1)では、海外現地法人の日本人派遣員が直接業者に問い合わせを行い、定期的に相見積もりをとることで、現地社員への牽制効果が得られる。
また、補助材料や消耗品については、現地の商品カタログとの値段を比較することで、不正を防止、発見することが期待できる。(2)のパターンでは、商品受入に対して複数人による立ち会いなども効果的だが、社員数の制約などがある場合は、日本人派遣員による抜き打ち検査が効果的だ。ただ、抜き打ち検査は不正の疑いが濃厚な時に限った方がよいケースもある。それを機に会社の会計ルールを熟知した社員が転職をすることも考えられるからだ。
【焦点】
近年、企業経営者は内部監査を従来以上に重要視している。社内の不正が企業価値を毀損(きそん)したり、経営陣に対して株主代表訴訟が提訴されることなどがあるためだ。
海外子会社の監査は、さまざまな制約があるため、日本国内よりも監査の頻度も少なくならざるを得ないというのが実態と思われるが、時代の要請でもあり、前述のような実効性のある対策で監査の質を上げて行くことが望まれる。
編集協力=みずほ銀行
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【プロフィル】荒木広一郎
あらき・こういちろう 外資系企業の営業職やシドニー支店勤務を経て、アジアを中心に日系企業の海外進出支援業務に従事。公認内部監査人。