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給与3年ぶり下げ止まり 「アベノミクス」波及へ道半ば
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厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査によると、2013年の現金給与総額(月平均)が3年ぶりに下げ止まるなど、日本経済に明るい兆しが見られた一方、基本給を含む所定内給与は低水準から抜け出せなかった。今春闘が賃上げの流れを作る大きな山場になるとはいえ、経済の好循環を目指す安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成果が家計に及んでいない実情を浮き彫りにした。
「好循環を実現するため、拡大した企業収益を賃金上昇や雇用拡大につなげていくことが極めて大事だ」。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、今春闘での賃上げ実現に期待を示した。
だが、勤労統計調査で示されたのは日本の雇用構造の脆弱(ぜいじゃく)さだ。雇用数の増加にもかかわらず所定内給与が減少し、残業代などの所定外給与が増える傾向は、アベノミクスによって創出された労働需要が企業の「現有戦力」の残業やパートの拡大という形で吸収され、正社員の新規雇用や基本給のベースアップ(ベア)まで回っていない「過渡期」であることを意味する。
日本総合研究所の湯元健治副理事長は「企業はアベノミクスが本物なのかどうかを見極めようとしている段階」とし、積極的な雇用拡大に踏み出せない経営者の心理を推し量る。ただ、湯元氏は「今後は過渡期を抜け出す」と指摘する。
SMBC日興証券によると、1月31日までに発表した3月期決算企業(金融を除く)457社の13年4~12月期決算では、最終利益の総額が前年同期比88.9%増と大幅に増加した。経営側からは「成果を賃金に反映していく」(日立製作所の中村豊明副社長)、「社員の苦労に最大限報いたい」(マツダの小飼雅道社長)など、賃上げに前向きな発言が相次いだ。
賃上げの流れに向けて鍵を握るのは、4月の消費税率引き上げ後の個人消費の動向だが、13年の実質賃金が2年連続で下落したことは微妙な影を落としかねない。
アベノミクスに伴う急激な円安が輸入価格の上昇を招いた結果、1月31日に発表された13年の全国消費者物価指数(10年=100、生鮮食品除く)は5年ぶりのプラスに転じた。
ただ、円安効果が賃金上昇のサイクルをもたらすまでにはタイムラグがあり、家計負担は増している。消費税増税の影響で個人消費が冷え込めば、企業業績が悪化し、賃上げ機運に水が差される恐れもある。