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【専欄】急速に冷める公務員就職熱 元拓殖大学国際学部教授・藤村幸義
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中国ではいま、地方公務員の選抜試験が各地で一斉に行われている。この数年、景気悪化に伴い企業の採用者数が低下してきているので、公務員人気はさらに高まっているかと思いきや、実際にはそうでもない。ほとんどの省市自治区で応募者が激減しており、公務員就職熱が急速に冷めつつある。
広東省のある学生は7月の卒業を前に、すでに大手の不動産会社から内定をもらっているが、できれば職業として安定感のある公務員になりたい。そこで広州市の地方公務員試験に応募することにしたのだが、大学の同じクラスからの受験者は、昨年の10人から今年はたったの1人でしかなかった。
同様の現象が各地で発生している。例えば浙江省では、昨年は受験者が36万人もいたのに、今年は22万7000人と4割近くも減っている。河北省も昨年の28万人に対し、今年は20万人でしかない。
中国の公務員試験では、細かい職位ごとに募集をしている。このため、職位によっては応募者が募集定員に達せず、再募集を行うとか、あるいは募集そのものをあきらめるケースも出ている。
原因の一つは、募集者数そのものが減っていることにある。習近平政権になってから全国に節約ムードが広がり、行政機構の整理や人員削減に取り組むところが増えているからだ。各地の募集者数をみても、増えているのは山西省、陝西省など数えるほどしかない。江西省のように、応募者数は10%の減少だが、募集者数も33%の大幅減になっているため、かえって競争率が47倍(昨年は34倍)に激化しているところもある。
だが理由はそれだけではなさそうだ。公務員になる最大のメリットは表向きの給与のほかに、福利厚生面での厚遇を受けることができること。さらには様々な「灰色収入」も期待できる。賄賂や贈り物とか、未申告の報酬などの類だ。ところが習近平政権下では、厳しい反腐敗キャンペーンが展開されていて、このメリットを享受しにくくなっている。
全国統一の国家公務員試験は今年も11月に実施される。応募者数は2009年に100万人の大台を突破し、その後も増え続けている。昨年は152万人と記録を更新した。募集者数は2万人余りなので、平均すると約70倍の狭き門。だが、今年の応募者数は地方公務員と同様、かなりの減少となりそうである。