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起業予備軍、小学生から育成へ コンテスト、体験プログラム…裾野拡大

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起業予備軍、小学生から育成へ コンテスト、体験プログラム…裾野拡大

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日本取引所グループが昨年9~11月に実施した起業体験プログラム。参加した学生は疑似的な株式会社の設立・経営などを体験した  政府が掲げる成長戦略の政策の柱の一つが「産業の新陳代謝とベンチャーの加速化」。当面の目標は、企業の開業率を現在の4%台半ばから欧米並みの10%台に引き上げることだ。それには起業予備軍の裾野を広げることが不可欠となる。こうした国家的な課題に向き合う形で、金融業界を中心に小中高生の起業意欲を駆り立てる活動が相次いでいる。

 リアルな世界体感

 1月11日の東大本郷キャンパス(東京都文京区)。経済産業省による「第1回 日本ベンチャー大賞」に輝いたユーグレナの出雲充社長やガンホー・オンライン・エンターテイメントの孫泰蔵会長らベンチャー業界の雄が見守る中、10組の高校生が「伊藤謝恩ホール」のステージに立ってプレゼンテーションを行った。日本政策金融公庫が主催する「第2回 高校生ビジネスプラン・グランプリ」の最終審査会だ。

 今回のコンテストにエントリーしたのは207校、1717件。テーマは「日本が抱えている問題を解決したいという大きな志が目立った」(山田康二・創業支援部長)。この中から全国の頂点に立ったのは愛知県立五条高校。IDを付与したICカードの活用による募金活動を通じ、寄付文化の定着を図るプランが光った。

 この顕彰制度は、単にアイデアを競うだけではない。「学生は地域の主役を担い、活性化に向けて活躍してほしい」(同)との思いがある。このため全国の高校に足を運んで出張講座を行い、ビジネスの「イロハ」を教える。具体的には価格決定などの仕組みのほか、セールスポイントの記載法や収支計画などに関してアドバイスを行う。これまでに延べ9000人の学生が受講しており、起業予備軍の育成に一役買っている。

 米英の起業研究者による意識調査では、日本は他国に比べて「創業に必要なスキルや経験」が不足する。また、創業にかかわる知識・能力が乏しく、起業家精神が弱いことも開業率押し上げを妨げる要因になっているとの指摘がある。

 日本で創業する企業は年間10万社。日本公庫はこのうち2割に対し融資している。その経験・ノウハウを起業教育の現場に還元すれば、一連の課題の克服にもつながる。それだけにコンテストは起業予備軍が集まる梁山泊のような位置づけとなっている。

 日本取引所グループはCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、昨年から起業教育を導入。9~11月には中高生を対象とした起業体験プログラムを実施した。「自ら学び、考えていく生きる力を育むこと」(中村寛・CSR推進室長)が目的だ。

 プログラムには約30人の学生が参加。4つのチームに分かれてそれぞれが疑似的に株式会社を設立、11月に東京都中央区で開かれたイベントで喫茶やスープなどの模擬店を経営する事業に挑んだ。

 最終的には売り上げを集計して決算を発表、株主総会も開催した。本物の司法書士や公認会計士もボランティアで加わり、会社の設立や監査をサポートした。学生は起業にかかわるリアルな世界を体感することができたという。

 日本取引所グループの斉藤惇・最高経営責任者(CEO)はプログラムについて、「引き続き力を入れていく」と起業教育の重要性を強調。今後は教育の裾野を広げるため、学校や自治体に働きかけながら全国展開につなげることも視野に入れている。

 奨学金制度を導入

 政府は、世界最高水準のIT(情報技術)社会の実現を目指し、成長戦略の中に義務教育段階からのプログラミング教育の導入を盛り込んでいる。この取り組みも起業家教育と密接にかかわってくる。

 サイバーエージェントは昨年3月、キッズプログラマー奨学金制度を導入した。プログラミングを本気で学びたい小学生が対象で、第1期は昨年4月から9月までの半年間に、延べ100時間にわたってプログラミング学習に取り組み、10月に成果を発表した。

 米シリコンバレーのベンチャー企業経営者は、大半がプログラマー出身だ。サイバーエージェントの藤田晋社長は「英語とプログラミングを自在に扱えるようでなければ、迫力ある経営者が誕生しない」と危機感を抱いており、今後も優秀なプログラマー育成を積極的に支援。加えて、それを通じて将来の起業意欲を喚起する考えだ。

 2014年版中小企業白書によると、12年の起業希望者は約84万人。1997年の約167万人から半減しており、政府が描く産業の新陳代謝は進んでいない。

 その理由の一つが、日本の起業家教育に対する基盤の脆弱(ぜいじゃく)さだ。起業に関心がある層に向けた調査では、起業家教育が「不十分」とする意見は6割を超えている。

 国の「日本再興戦略」でも、「起業家育成プログラムを活用した初等中等教育からの推進」を明記しており、起業家育成の土壌をいかに肥沃(ひよく)にできるかが成長戦略の鍵を握る。(伊藤俊祐)

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