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自動車産業への依存からの脱却 伊ピエモンテ州に根付いたスローフード

安西洋之

 もともとイタリアが好きであったわけでもないし、住みたいと考えていたのは、仕事などで縁のあった英国やフランスだった。人生の師匠と心から思えた人のもとで修業したいと考え、たまたま、その人がトリノにいたのだった。

 よって言うまでもなく、その当時、ピエモンテ州の小さな街・ブラで誕生して間もないスローフードなどという活動は、ぼくの関心の外だった。トリノに初めてマクドナルドが開店した時、それに反対するスローフードの人たちの様子を眺め「ああ、そういう人たち、いそうね」と思ったに過ぎない。

 しかし、それから長い月日を経て、ぼくは家具・食の産業について書いて語ることが増えた。それでもスローフードについては距離感があった。だが、この数年、スローフードの動きを調べ始め多大な興味をもつに至った。今や彼らが今世紀に入って力を入れているプライベート原産地呼称制度は、ぼくの講演の際のネタにもなっている。

 先週、スローフードの協会がトリノ市やピエモンテ州と一緒になって開催している、2年に一度の食の祭典「テッラ・マードレ:サローネ・デル・グスト」にも足を運んでみた。フィアット本社の隣にある見本市会場である。

 そこで気づいたのは、食をツールとした社会変革活動の拠点としての充実ぶりである。「説明する」「語りかける」「仲間に入れ込む」ための仕掛けがあり、会場のさまざまな一角でトークセッションが行われている。

 そういう会場をまわりながら、トリノ市やピエモンテ州が自動車産業以外のネタを着実に育ててきた成果を、ぼくは感慨深く思わざるをえなかった。

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