カマンベールチーズをめぐる産地保護の葛藤 食文化の状況は一段と深刻に (1/3ページ)

【安西洋之のローカリゼーションマップ】

 EUや国など行政が定める農産品などに対する地理的表示の制度がある。フランスのシャンパンやパルマのハムなどが、その適用例だ。この制度が形骸化しつつある、と警告を発している団体がある。イタリアのスローフードだ。

 EUにはPDO(原産地名保護制度)、PGI(地理的表示保護)、TSG(伝統的特産品保証)との3種類があり、地域特有の文化的・経済的な特徴と恩恵を保護することが目的としている。

PDOは生産プロセスが表示された地域内に限られており、PGIより厳しい。TSGは地域よりも伝統的プロセスの保護を優先する。

 スローフードが指摘している一つの例が、フランスのカマンベールチーズに対するフランスPDOの変更だ。生物多様性のためのスローフード財団のサイトにはその内容が記載され、PDOの趣旨に反するとの関係者の意見を紹介し、フランスの伝統食品を守るために努力するとの意思を表明している。以下、要約だ。

“フランスのINAO(国立原産地名称研究所)はカマンベールチーズに低温殺菌のミルクの使用を2021年より認めることにした。これは数年前に「ノルマンディのカマンベールPDO」との名称に似た表示「ノルマンディで生産されたカマンベール」が認められたことに端を発している。 

 「ノルマンディで生産されたカマンベール」は多国籍乳製品メーカーであるラクタリス社の製品に使われているのである。同社は低温殺菌ミルクを使用したカマンベールチーズの95%を生産しているが、INAOの新しい規則によれば、カマンベールは2つの種類に分けられ、1つは「低温殺菌ミルクで30%はローカルの牛のミルク、70%は牛の生育地は問わない」もので、もう1つは「本当のノルマンディのカマンベール」という高品質の生乳で作られた現在のPDOに合致するチーズだ。”

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