114票のかすかな光
岸田総理に、安全保障環境の変化を冷徹に見通す力と、孫権のような「断机」の勇があるか。そこに、これから数年の日本の命運がかかっている。しかし、残念ながら、今の岸田総理に断机の勇が備わっているとは感じられない。そこに得も言われぬ不安を感じる。
杏林大学名誉教授で外交評論家の田久保忠衛氏は、最近の産経新聞に寄せた論稿で、岸田総理の発言に対し「名状しがたい不安を抱いた」と率直に語られているが、激しく同感する。岸田政権発足時の支持率が40%台から50%台で期待されたほどでないことは、国民が、岸田総理の有事対応力に一抹の不安を抱いていることの表れと見ることもできる。
ヒトラーのドイツが西方に向かって進撃を開始した1940年5月、首相をチェンバレンからチャーチルに変えることが出来たイギリスは不幸中の幸いだった。
日本はどうだろう。総裁選で、114票の議員票が高市早苗候補に投じられたことが、かすかな光か。
【疾風勁草】刑事司法の第一人者として知られる元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行さんが世相を斬るコラムです。「疾風勁草」には、疾風のような厳しい苦難にあって初めて、丈夫な草が見分けられるという意味があります。アーカイブはこちらをご覧ください。