競合他社と比べ、どんな強みがあると考えるか
「バックオフィス系のサービス1つ1つについて、それぞれがトップクラスとなるようなレベルで機能を開発して展開しているところが強みだろう。法人向けIT製品比較・資料請求サイトのITトレンドが毎年発表しているランキングでは、2019年の上半期で6サービス全部(※当時は6サービス)がそれぞれの分野で1位だった。2019年の年間ランキングでも採用管理だけが2位で、それ以外は1位。6サービス中5サービスが1位だった」
評価されたポイントは
「勤怠管理を筆頭に、各サービスの機能が圧倒的に多いことではないか。ジョブカンシリーズは特に対象となる業種業態を絞って展開しているサービスではなく、すべての企業を対象にしていて、機能数の多さで汎用性をカバーしている。実際、顧客の業種や、人数規模を以前調べたところ、ほぼ政府が公表している企業の業種割合や規模割合と一緒で、ジョブカンの導入企業の分布図は日本の縮図という感じだった」
売り上げを追わない、タテの営業体制
ジョブカンはもともと社内向けだった?
「そう。当社(Donuts)は2007年2月の創業で、DeNAの一期生である2人(西村啓成代表取締役と根岸心取締役)が立ち上げた。ウェブサービスを通じ、社会的に意味のあることで世の中にインパクトを与えていきたい、というところから始まっている。最初のうちは受託業務を手掛けながら、少しずつ自社サービスを展開していった。ジョブカンシリーズの第1弾のサービス、勤怠管理をリリースしたのは、割と早い時期で2010年だが、本格的に力を入れ始めたのは、『単車の虎』というゲームがヒットした後の2012年になる。そもそも、この勤怠管理サービスは、社内にインターンやアルバイトが増えてきて、手間のかかる勤怠管理も全部自分たちで自動化しようということで社内向けにつくったものだ。それを外部に売り始めたのは、『これだったら社外でも売れるのではないか』という周囲の後押しがあったことが大きい」
初めの2年間は売れなかったが、その後は破竹の勢いで売り上げを拡大していった。なぜこれだけの成長を果たせたのか
「基本的にはプロダクトとマーケティング、営業の3つをすべて強化するという目線で最初から取り組んできたことがあると思う。まず、プロダクトでは、例えば、勤怠管理でいうと、残業設定や休暇管理など表面上、こんな機能があるとうたうことは簡単だが、実際はより複雑な機能が求められ、それが足りないと導入してもらうには至らない。そこで、営業側から、ニーズのある機能をスピード感を持って直接、開発側に伝え、機能を日々アップデートするようにした。マーケティングに関しては最初1拠点当たり、初期費用5万円で月額500円という感じで売り出したが、すぐにプライシングを変えた。当時、ジョブカンの強みは勤怠管理とシフト管理で、両方使いたいユーザーもいれば、そうではないユーザーもいる状況だった。そこで、両方使えるプランと片方だけのプランという形で値段の変更を行い、手軽に導入できるようにした。それから、『残業管理ができます』『働き方の見える化ができます』『タイムカードの集計が楽になります』といったように、時代とともに訴求点を変えていった。あとは、ジョブカンはBtoBのサービスだが、BtoCで成功しているモデルを意識して、いろいろな取り組みを進めたことも大きい。当時、BtoBのサービスでは、アカウントは自動で発行できるものではなくてお問い合わせがあってから渡すのが通常だったが、自動でできるようにした。それはBtoCのサービスでは普通にできることだった。ほかには、ホームページの雰囲気もBtoCのサービスのように、やわらかいタッチに変えたら、反応も良かった」