ローカリゼーションマップ

新型コロナでミラノのスーパーにも異変? 全体像把握の難しさが招くパニック

安西洋之
安西洋之

 どちらのタイプの客もソーシャルメディアはやっている。だが、情報の重みのつけ方や解釈の仕方に違いがあるのかとも考えた。料理に時間をかけるような人たちの方が情報に敏感なのか。

 24日の月曜日も事情は同じだったが、25日の火曜日、それまで品薄だったスーパーに行ったら、既に通常ベースの棚に戻っていた。この系列のミラノ市内の他の店舗を実際に見ていないので不明だが、仮に同じようにノーマルな状況に回復したとすると、2日間、ある系列の店に来る客たちは、他人の買いだめを見ての連鎖で買い増しをするとのパニックが起きたと思われる。

 買いだめ傾向にあるスーパーにしか行かない人は「ミラノ全体で買いだめに走っている」と思い込み、それに拍車をかける行動をとる。その様子をソーシャルメディアにもあげる(ぼくは24日、まったく商品がなくなった肉売り場を、3人が同時にスマホで写真をとっていたのを見た。まるで観光地だ!)。

 言ってみればテキトーな食事ですます習慣の人は、そのような現実を目にすることがない。棚に食品が充分に揃っているスーパーでいつも通りに買い物をするだけだ。

 このことをテーマに時間とエネルギーをかけて調べれば、何か他のことが分かるかもしれない。ただ、日常生活を過ごしながらできることは限られている。その限られた条件、マスメディアやソーシャルメディアのニュースと自分の狭いリアル空間のなかで、ぼくたちは全体像をできるだけ正確に知りたいと願う。

 クリティカルに状況をみつめる「癖」でしか達成できないことなのだろう。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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