1人の発想が仮に斬新であっても、自己完結型の人間でイノベーションを目指すコミュニティは動かせない。しかも、今強く求められるイノベーションは、発想の斬新さに基づくものではない。「意味ある目的変更」である。この点に多くの人の関心が向いている。したがって、その変更をコミュニティのなかでコンセプトとして強化していき、それを実践に移行していくコラボレーションのプロセスが重視されるイノベーションにあって、ヒーローは不要なのだ。
即ち、意味ある目的地の変更を成し遂げるには、対象とするコンテクストの理解に基づいた「深い思考」が必要だ。キャラクターが尖がっているかどうかなど、あまり問題ではない。それは周囲に潰されないための目隠しに過ぎない。
ここでイノベーターに必要なのは、よく言われる旅の回数や移動距離に象徴される精力ではない。自然のなかに浸ることでもない。それらは気分転換や頭の切り替えに役立つかもしれないが、肝心な点で本当に必要なことではない。
以下は比喩である。
本当に必要なのは、歴史ある都市を色々なアングルから散策しながら、肩を並べて歩いている人の呟きをしっかりと耳に留めることだ。そしてその相手と楽しい会話ができること。
かなりイノベーターの印象が変わるでしょう?
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。